判旨
憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的・肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指し、単に被告人にとって過重な刑や、法定刑の範囲内での不適当な量刑を意味するものではない。
問題の所在(論点)
法定刑の範囲内で行われた量刑、および被告人にとって過重に感じられる刑罰が、憲法36条の「残虐な刑罰」に該当するか。
規範
憲法36条にいう「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的、肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を意味する。したがって、被告人の側から見て過重な刑であることや、法定刑の種類の選択または範囲内における量刑の不当を指すものではない。
重要事実
被告人らは、物価統制令違反の罪に問われ、原審において懲役3月および罰金2万円の刑に処せられた。これに対し被告人側は、一度きりの行為に営利目的を認めて処罰することや、科された刑が過重であることを捉え、憲法36条が禁止する残虐な刑罰に該当する等と主張して上告した。
あてはめ
本件において被告人に科された刑は、犯行当時の物価統制令(昭和22年勅令第133号による改正前)の規定に基づく懲役3月および罰金2万円であった。これは法定刑の範囲内の量刑である。憲法36条が禁止する刑罰は、人道的見地から不必要な苦痛を強いる残酷なもの(死刑執行方法の残酷性や身体刑等)を指すべきであり、本件のような自由刑や財産刑の適用の妥当性は、同条の問題ではない。したがって、量刑が不当であるとの不服は同条違反の根拠とはなり得ない。
結論
被告人に対する量刑は、憲法36条にいう残虐な刑罰には当たらない。
実務上の射程
憲法36条の定義(人道上の残酷性)を示す際のリーディングケース。答案上は、死刑制度の合憲性や、法改正による厳罰化が争点となる際に、あてはめの前段階として本規範を引用する。単なる「重すぎる量刑」は本条の問題ではなく、刑事訴訟法上の量刑不当の問題として処理すべきことを区別するのに役立つ。
事件番号: 昭和25(あ)2691 / 裁判年月日: 昭和27年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的、肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指す。法律の範囲内で量定された刑が、被告人にとって過重であっても、直ちにこれに該当するものではない。 第1 事案の概要:被告人が提起した上告において、弁護人は事実審による量刑が重すぎることを理…
事件番号: 昭和26(れ)147 / 裁判年月日: 昭和26年6月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁ずる「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的・肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指す。法律の範囲内で量定された刑罰や、裁量の範囲内での執行猶予の不付与は、直ちにこれに当たらない。 第1 事案の概要:被告人が犯した罪に対し、原審(事実審)は所定の刑を言い渡したが、その際に刑の…
事件番号: 昭和26(あ)2624 / 裁判年月日: 昭和27年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的、肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指す。法定刑の範囲内での量刑の不当は、直ちに同条に違反するものではない。 第1 事案の概要:本件の上告人は、原判決の量刑が重すぎることを不服として、憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」に該当する旨を…
事件番号: 昭和25(あ)1802 / 裁判年月日: 昭和26年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは人道上残虐と認められる刑罰を指す。法律の範囲内で行われた量刑は、被告人にとって過酷であっても同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受け、その量刑を不服として控訴したが棄却された。被告人(弁護人)は、原判決の維持した量刑が不当に…