判旨
憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」とは、不必要な苦痛を伴う非人道的な刑罰を指す。法律の範囲内で量定された通常の刑罰は、被告人にとって過重に感じられたとしても、直ちに同条に違反するものではない。
問題の所在(論点)
事実審の裁判所が法律の規定する範囲内で科した罰金刑等の「普通の刑」が、被告人にとって過重であることを理由に、憲法36条の「残虐な刑罰」に該当するか。
規範
憲法36条にいう「残虐な刑罰」とは、刑罰の性質またはその執行の方法が非人道的、酷烈なものを指す。事実審が法律の定める範囲内において、通常の刑罰を選択し、その量刑を決定した場合には、それが被告人にとって主観的に過重なものであったとしても、直ちに「残虐な刑罰」には該当しない。
重要事実
被告人は原審において罰金3万円の刑に処せられた。これに対し、弁護人は、当該量刑は被告人にとってあまりに重く過酷であり、憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」にあたるとして上告した。
あてはめ
本件で被告人に科された刑は罰金3万円であり、これは法律において許容された範囲内の「普通の刑」である。このような通常の財産刑は、刑罰の性質や執行方法において非人道的な苦痛を強いるものとはいえず、被告人の側から見て過重であるとの主観的な事情を考慮しても、同条の禁止する残虐な刑罰にはあたらないと解される。
結論
被告人に対して罰金3万円を処した原判決は憲法36条に違反せず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
量刑不当を理由に憲法違反(36条)を主張する場合の限界を示す。法定刑の範囲内での通常の運用である限り、実質的な「残虐性」が認められる余地は極めて限定的であることを示す趣旨で引用される。
事件番号: 昭和26(れ)1170 / 裁判年月日: 昭和26年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的・肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指し、単に被告人にとって過重な刑や、法定刑の範囲内での不適当な量刑を意味するものではない。 第1 事案の概要:被告人らは、物価統制令違反の罪に問われ、原審において懲役3月および罰金2万円の刑に…
事件番号: 昭和26(れ)147 / 裁判年月日: 昭和26年6月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁ずる「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的・肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指す。法律の範囲内で量定された刑罰や、裁量の範囲内での執行猶予の不付与は、直ちにこれに当たらない。 第1 事案の概要:被告人が犯した罪に対し、原審(事実審)は所定の刑を言い渡したが、その際に刑の…
事件番号: 昭和26(あ)2624 / 裁判年月日: 昭和27年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的、肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指す。法定刑の範囲内での量刑の不当は、直ちに同条に違反するものではない。 第1 事案の概要:本件の上告人は、原判決の量刑が重すぎることを不服として、憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」に該当する旨を…
事件番号: 昭和25(あ)3111 / 裁判年月日: 昭和27年2月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実審が法律の許容する範囲内で言い渡した通常の刑罰は、仮に被告人にとって過酷に感じられるものであったとしても、憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には該当しない。 第1 事案の概要:被告人が犯した罪に対し、事実審の裁判官が法律で許された範囲内(法定刑の範囲内)において量刑を決定し、刑を言い渡した。これ…