判旨
被告人の自白以外に、共犯者等の供述録取書や主要食糧販売台帳、配給通帳などの書証が存在する場合、憲法38条3項の「自白が唯一の証拠」である場合には当たらない。
問題の所在(論点)
被告人の自白以外に、他人に対する聴取書や販売台帳等の書証が証拠として存在する場合、自白を唯一の証拠として有罪としたことになり、憲法38条3項(自白の補強法則)に違反するか。
規範
憲法38条3項および旧刑事訴訟法下において、有罪判決を下すためには被告人の自白だけでなく、これと合致し実質的な証明力を有する補強証拠を必要とする。被告人の公判廷における自白のほかに、他人(共犯者や関係者)の供述録取書や客観的な帳簿等の書証が存在する場合には、自白を唯一の証拠として犯罪事実を認定したものとはいえない。
重要事実
被告人は、自身の飯場が解散し、所属していた25名の労働者が山形県の郷里へ帰った後、彼らから主食(米等)の受配依頼を受けていないにもかかわらず、配給を受けようとして詐欺等に及んだ。原判決では、被告人の原審公判廷における自白に加え、関係者A・B・C・Dに対する司法警察官代理の聴取書、ならびに押収された主要食糧販売台帳および配給通帳の記載内容が証拠として採用されていた。
あてはめ
本件では、被告人の自白以外に、Aら4名に対する聴取書という供述証拠、および販売台帳・配給通帳という客観的な書証が総合して証拠として採用されている。これらの証拠は、被告人が25名の労働者から受配を依頼されていなかったという詐欺の事実を裏付ける独立した証拠価値を有する。したがって、本件の認定は被告人の自白のみに基づいたものとは認められない。
結論
被告人の自白を唯一の証拠として犯罪事実を認定したものとはいえないため、憲法38条3項に違反せず、上告を棄却する。
実務上の射程
自白の補強法則に関する基本判例である。公判廷での自白であっても補強証拠が必要であることを前提に、供述録取書や帳簿等の客観的証拠が併存すれば、補強証拠として十分であることを示す。答案上は、補強証拠の必要性と、どの証拠が「自白から独立した証拠」として機能しているかを指摘する際の根拠となる。
事件番号: 昭和25(あ)3102 / 裁判年月日: 昭和26年9月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白に加えて、証拠能力を有する他人の供述を総合して犯罪事実を認定することは、憲法38条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の自白が存在する事案において、第一審判決は自白とともに証人AおよびBの供述を総合して犯罪事実を認定した。これに対し弁護人は、当該証人の供述は証拠に採用し得ないも…
事件番号: 昭和24新(れ)375 / 裁判年月日: 昭和25年5月11日 / 結論: 棄却
所論は、所論にいわゆる從來の大審院判例なるものを毫も具体的に摘示していないから、原判決が如何なる大審院の判例と相反する判斷をしているのかこれを判定するに由がなく、從つて、刑訴規則二五三條に違反し採ることができない。