判旨
公判期日の通知が弁護人になされた形跡がない場合であっても、弁護人が実際に出廷して適法に弁論を行っているなど、弁護する機会が実質的に保障されているときは、弁護権の不法な制限には当たらない。
問題の所在(論点)
弁護人に対する公判期日通知がなされなかった手続上の不備がある場合に、これが弁護権を不当に制限する違憲・違法なものとして破棄事由となるか。
規範
刑事訴訟法上、公判期日の通知漏れ等の手続的瑕疵があったとしても、被告人の防御権や弁護人の弁護権が実質的に侵害されたといえない特段の事情(実際に出廷して弁論を行うなど、弁護の機会が十分に与えられたこと)がある場合には、当該手続違背を理由として判決を破棄することはできない。
重要事実
控訴審において、昭和26年1月8日の公判期日の通知が弁護人になされた形跡が記録上認められなかった。しかし、同日の公判調書によれば、当該弁護人は実際に出廷しており、自ら提出した控訴趣意書に基づき適法に弁論を行っていた。
あてはめ
本件では、記録上期日通知の形跡はないものの、弁護人は公判期日に欠かさず出廷している。また、出廷した上で自らの控訴趣意書に基づき適法に弁論を展開している。これらの事実に照らせば、裁判所が被告人のために弁護する機会を与えなかったとはいえず、弁護権の行使が不法に制限された形跡も認められない。したがって、通知の欠如という形式的瑕疵は、実質的な弁護権の侵害を構成しないといえる。
結論
弁護権の行使を制限した事実は認められないため、上告は棄却される。
実務上の射程
手続規定の違反がある場合でも、当該規定の趣旨(本件では防御権の保障)が実質的に損なわれていない場合には、訴訟手続の法令違反には当たらない(または判決に影響を及ぼさない)とする判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)3013 / 裁判年月日: 昭和27年10月7日 / 結論: 棄却
控訴審において第一回公判期日の通知が被告人の私選弁護人に対して為されていなくても、被告人が控訴審で初め弁護人を私選しない旨回答しながら、被告人のために弁護人が国選せられ、被告人および国選弁護人の双方から控訴趣意書の提出があり、国選弁護人に右公判期日の通知がなされた後(但し、被告人に対しては未だ同公判期日の召喚場が送達さ…