一 代用監獄である警視庁管下の警察署に在監する被告人に対して起訴状謄本を送達するにあたり、監獄の長たる右警察署長あてとすることなく警視総監あてとすることは違法である。 二 警視庁刑事部押送係において受領した起訴状謄本の伝達を受けた同庁管下警察署看守係巡査が、刑訴第二七一条第一項所定の期間内に同署に在監する被告人に対し、弁護人の選任通知書とともに、右記訴状謄本を示し、且つ、読み聞かせた上、被告人承諾の下に改めてこれを保管したという場合には、被告人に対する起訴状謄本の交付があつたものと認められるのみならず、弁論の経過をみても被告人の防禦権が害されたと認むべき何らの事迹のないときは、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められない。
一 在監者に対する送達が違法と認められる一事例 二 違法な起訴状謄本の送達と刑訴第四一一条
刑訴法271条,刑訴法54条,刑訴法411条,民訴法168条
判旨
在監者への起訴状謄本送達を監獄の長でない者宛てに行った不備があっても、実質的に被告人への交付が行われ防御権が害されていないならば、判決を破棄すべき著しい正義に反する事態には当たらない。
問題の所在(論点)
在監者への送達を監獄の長以外の者宛てに行った不適法な送達について、被告人に実質的な伝達があり防御権の侵害がない場合に、原判決を破棄すべき事由となるか。
規範
在監者に対する送達は、監獄の長に対して行わなければならない(刑訴法54条、当時の民訴法168条)。この手続に違背した送達であっても、実質的に書類が被告人に伝達され、かつ被告人の防御権が害されていないと認められる特段の事情がある場合には、上告受理の要件となる「著しく正義に反する」事由(刑訴法411条)には該当しない。
重要事実
被告人が代用監獄たる蔵前警察署留置場に在監中、起訴状謄本が監獄の長たる警察署長宛ではなく、警視総監宛(警視庁刑事部押送係受領)で送達された。その後、謄本は被告人が在監する警察署の看守係巡査に伝達され、巡査は被告人に対し、弁護人選任通知書と共にこれを示し、読み聞かせた。被告人はこれを承諾した上で、改めて保管を委ねたという経緯があった。
あてはめ
本件送達が警察署長宛でない点は形式上違法である。しかし、事後的プロセスにおいて看守係巡査を介して被告人本人に対し内容の読み聞かせ及び提示が行われており、実質的には起訴状謄本の交付があったと同視できる。さらに、記録上も被告人の防御権が害された形跡は認められない。したがって、送達の宛先不備という形式的瑕疵のみをもって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められない。
結論
本件送達の不備は原判決を破棄すべき理由には当たらず、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事手続における書類送達の瑕疵について、被告人の実質的な防御権保護の観点から、破棄事由としての重大性を判断する際の枠組みとして機能する。手続的違法があっても、目的(内容の周知と防御機会の確保)が達せられ、実害がない場合には、判決の効力に影響しないとする実質的判断の例証である。
事件番号: 昭和25(あ)144 / 裁判年月日: 昭和25年7月6日 / 結論: 棄却
一 被告人等の提出した控訴趣意書は、被告人等のこれに基く陳述の有無を問わず當然控訴審における訴訟資料となるものであるから、苟くも被告人等においてこれを特に撤回せざる限り、控訴審においてはこれらの控訴趣意書に對して判斷を下すべきものであると云わねばならぬ。 二 原判決に被告人等の控訴趣意書が添付されていなくてもその趣意書…
事件番号: 昭和27(あ)3571 / 裁判年月日: 昭和29年2月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留手続に不法があるとしても、それのみでは判決に対する上訴理由とはならず、また原審が勾留手続につき職権調査を行わなかったとしても違法とはいえない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗被疑事件で勾留され、その後の窃盗被告事件等の発生に伴い勾留が更新された。被告人側は、原審(控訴審)が勾留手続に関する重大…