一 原審における国選弁護人の選任が控訴趣意書最終提出日経過後であつたとしても、弁護人は控訴趣意書補充書を提出し、原審公判延に出頭の上異議なく被告人の控訴趣意書及び右補充書に基いて弁論をしているのであり、原判決もこの補充書に対し判断を加えているのである、従つて、原審が弁護権の行使を制限したことを前提とする論旨は、既にその前提において失当であるから論旨の理由のないこと明らかである。 二 上申書等として提出された書面であつて被告人出頭の原審公判廷で弁護人が控訴趣意として陳述していないものについては、原判決がこれについて判断を与えなくても違法はない。
一 国選弁護人の選任が控訴趣意書最終提出日経過後であつても弁護権の制限とならない事例 二 控訴審において上申書等として提出された書面につき判断することの要否―弁護人が控訴趣意として陳述していない場合
憲法37条3項,刑訴法376条,刑訴法289条,刑訴法272条,刑訴法404条,刑訴法388条,刑訴法389条,刑訴法392条,刑訴規則177条,刑訴規則178条,刑訴規則250条
判旨
憲法37条1項の「公平な裁判所」とは、裁判所の組織・構成において偏頗の恐れがないことを指し、具体的事件における裁判処理の当不当をいうものではない。
問題の所在(論点)
具体的事件における裁判所の審理・判断の当否が、憲法37条1項の「公平な裁判所」に違反するか。また、弁護権の行使に制限があったとされる場合、同条3項に違反するか。
規範
憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、裁判所の組織および構成において、偏頗の恐れのない客観的な状態が保障されている裁判所を意味する。したがって、特定の具体的事件の審理過程や判断内容といった、裁判所の個別的な処理の当否は、同項の違反を基礎づける事由とはならない。
重要事実
被告人が、原審における控訴趣意書や上申書の一部について判断が示されなかったことや、国選弁護人の選任経過に問題があったこと等を理由として、憲法37条1項(公平な裁判所)および3項(弁護人依頼権)に違反すると主張して上告した事案。
あてはめ
まず、憲法37条1項については、同条が保障するのは組織・構成の公平性であり、本件のような裁判所の判断漏れの有無といった処理の当不当は、その概念に含まれない。次に、弁護権(37条3項)については、国選弁護人が控訴趣意書補充書を提出し、公判廷で異議なく弁論を行い、原判決もそれに対し判断を加えている以上、弁護権の行使が制限されたとは認められない。
結論
憲法37条1項および3項の違反には当たらない。原審の判断に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
「公平な裁判所」の定義を明示した基本判例である。答案上は、裁判官の忌避理由等、組織的な公正さが問われる場面で本規範を提示すべきであり、単なる誤判や手続上の瑕疵の主張に対しては、本件と同様に射程外であることを指摘する使い方が適している。
事件番号: 昭和26(あ)3208 / 裁判年月日: 昭和27年5月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、組織構成において偏頗(へんぱ)のおそれのない裁判所を意味し、裁判官の具体的な判断内容や量刑の当否をもって直ちに同条項違反となるものではない。 第1 事案の概要:被告人Aらに対し、第一審および控訴審において有罪判決が下された。これに対し被告人側は、第一審公判…