判旨
勾留が不法であったとしても、その間になされた訴訟行為が当然に全部無効となるわけではない。
問題の所在(論点)
身柄拘束(勾留)が不法・不当である場合、その拘束期間中になされた訴訟行為(証拠調べや公判手続等)の効力は一律に否定されるか。
規範
勾留手続の適法性と、その間になされた訴訟行為の効力は別個の問題である。仮に勾留が不法であったとしても、そのことのみをもって、当該期間内に行われた全ての訴訟行為が当然に無効となるものではない。
重要事実
被告人は、昭和25年12月16日の起訴から同月19日の保釈までの間の拘束、および昭和26年3月19日の第一審有罪判決による収容から同年5月14日の原審における正規の勾留までの間の拘束が不当であると主張した。その上で、不当な拘束期間中になされた全ての訴訟行為は無効であり、原判決には違憲・違法の事由があるとして上告した。
あてはめ
本件において、被疑事実と起訴事実の間には同一性が認められるため、そもそも本件勾留が不法であるとは認められない。さらに、仮に被告人が主張するように勾留が不法であったとしても、その期間中に行われた訴訟行為が全て無効になると解することはできない。したがって、手続上の不当を理由に一連の訴訟行為の無効をいう被告人の主張は、法理上採用し得ない。
結論
勾留の不法は直ちに訴訟行為の無効を導くものではないため、本件上告には理由がなく、棄却される。
実務上の射程
強制処分に違法がある場合の訴訟手続への影響に関する判例である。違法収集証拠排除法則とは異なり、手続全体の無効(公訴棄却等)を導くためには、身柄拘束の違法が公判手続の公正を根本から損なうような特段の事情が必要であることを示唆している。実務上は、勾留の違法を理由とする公判手続の無効主張に対する反論として引用可能である。
事件番号: 昭和36(あ)2837 / 裁判年月日: 昭和38年7月25日 / 結論: 棄却
所論勾留状の被疑事実(窃盗)と所論起訴状の公訴事実(賍物故買)との間には、公訴事実の同一性ありと解するのが相当である。注、所論の (勾留状の被疑事実)被疑者は昭和三五年八月一六日午前一一時頃より同日午後四時〇分頃迄の間東京都品川区abの)c番地通信員A方において同人所有に係る現金六千円及びトランジスターラジオ(時価金八…