そして所論の聴取書が原審において適法に証拠調をされていないことは所論のとおりであつて、同聴取書を証拠とした原判決は違法といわなければならぬが、同聴取書を除くその余の原判決挙示の各証拠によつて原判示事実の認定の認定はこれを肯認するに難くないから、所論の違法は原判決に影響を及ぼさないものであるので刑訴四一一条を適用して原判決を破棄すべきものとは認められない。
適法な証拠調を欠く証拠を他の証拠と綜合して事実を認定した判決の違法と刑訴第四一一条
旧刑訴法336条,刑訴411条
判旨
被告人の供述が不法な勾留中になされたという一事のみをもって、直ちにその供述の任意性が否定されるわけではない。また、検察官が勾留請求の要否を判断するために請求前に行った訊問に基づく供述は、不法な勾留中のものとはいえない。
問題の所在(論点)
不法な勾留中になされた自白は直ちに任意性が否定されるか。また、検察官が勾留請求前に行う訊問に基づく供述は不法な勾留中の供述にあたるか。
規範
自白の証拠能力に関し、供述が不法な勾留中になされたという一事をもって、その供述が任意になされたものではない(任意性に疑いがある)と速断することは許されない。また、検察官が勾留請求の必要性の有無を判断するために、勾留請求前かつ逮捕後の法定制限時間内に行う訊問は適法な手続の範囲内であり、これによる供述は不法な勾留によるものとは認められない。
重要事実
被告人は昭和23年9月9日午後4時30分に司法警察官に逮捕された。翌10日に裁判官から逮捕状が発せられ、さらに翌11日午後3時(逮捕から48時間以内)に検察官から勾留請求がなされた。問題となった検察官の訊問調書は、その内容や日付から、検察官が勾留請求の要否を決するために、請求前に行った訊問を記録したものと推認された。弁護人は、当該供述が不法な勾留中になされたものであり、憲法に違反し証拠能力がないと主張して上告した。
あてはめ
本件において、検察官による訊問は逮捕から48時間以内の制限時間内に行われており、かつ勾留請求の必要性を判断するという適法な目的のためになされている。したがって、当該訊問により作成された調書は不法な勾留下で得られたものとはいえない。仮に不法な勾留があったとしても、その事実のみから直ちに供述の任意性が欠如していると断定することはできず、諸般の事情を総合して判断すべきである。
結論
本件の被告人の供述は不法な勾留中になされたものではなく、憲法違反の主張は前提を欠く。また、不法な勾留の一事をもって任意性を否定することはできないため、証拠能力を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
違法収集証拠排除法則または任意性の問題として機能する。不当な抑留・拘禁下の自白(憲法38条2項、刑訴法319条1項)の判断において、期間の不法性という形式的側面だけでなく、実質的な任意性の有無を検討すべきとする基準として活用できる。特に勾留請求前の検察官訊問の適法性を肯定する際の根拠となる。
事件番号: 昭和23(れ)1095 / 裁判年月日: 昭和24年4月20日 / 結論: 棄却
原判決の理由中においてBの一字を抹消しながら判事の認印等を缺くことは所論のとおりであるが、かかる違法は判決に影響を及ぼさないこと明白であるから上告理由として採用し得ない。