一 公訴提起前において、同一被疑者を合計一〇日を超えて勾留したとしても、それが別個の二個の勾留状の執行によるもので、二回目の勾留状記載の被疑事実が一回目の勾留状記載の被疑事実の外に新たな別の事実を含み、公訴の提起があつたのはその新たな事実についてであつて、しかも右二回目の勾留状請求の日から一〇日以内であつた場合には、公訴提起当時の被疑者の勾留は刑訴応急措置法第八条第五号に違反するものではない。 二 假りに、本件の勾留が違法であつたとしても、それに對する不服の申立は、抗告その他の特別な手續によつてなさるべきであり、その違法は原判決に影響を及ぼさないこと明かであるから、上告の適法な理由ではない。(昭和二三年(れ)第四四七號同年一二月一日大法廷判決參照)
一 別個の被疑事実について発せられた二個の勾留状により合計一〇日を超えて被疑者を勾留することと刑訴応急措置法第八条第五号 二 勾留の違法と上告の適否
刑訴応急措置法8条5号,舊刑訴法91條,舊刑訴法456條,舊刑訴法457條,舊刑訴法411條
判旨
勾留の違法は公訴提起の効力に影響を及ぼさず、また勾留に違法があったとしても、そのこと自体は判決の基礎となる実体審理に直接の影響を与えないため、上告理由にはならない。
問題の所在(論点)
勾留手続に違法がある場合、その違法は公訴提起の効力を否定し、あるいは実体判決(原判決)を破棄すべき事由となるか。
規範
公訴提起の効力は、その前提となる勾留の適法性と連動するものではない。また、勾留の適法性に関する不服申立ては抗告等の特別の手続によってなされるべきであり、勾留の違法は特段の事情がない限り原判決(実体判決)の結果に影響を及ぼさない。
重要事実
被告人は、A宅での窃盗容疑で第1回勾留状が発せられ、その後、B宅での窃盗及び盗品処分容疑で第2回勾留状が執行された。被告人は第2回勾留状の請求から10日以内に、B宅で盗まれた盗品の牙保・運搬の事実で公訴提起された。弁護人は、第1回勾留からの継続性を理由に拘禁期間の制限(刑訴応急措置法)に違反し、公訴提起自体が違法であると主張して上告した。
あてはめ
まず、本件の第2回勾留は第1回とは異なる別個の犯罪事実(B宅での窃盗等)に基づくものであり、適法な期間内に公訴提起がなされている。さらに、仮に勾留に何らかの違法があったとしても、公訴提起の手続は勾留の違法と運命を共にするものではない。勾留に対する不服は、独立した不服申立手続によって解決されるべき性質のものであり、勾留の適否が直ちに実体審理の結果である原判決の妥当性に影響を及ぼす関係にはない。
結論
勾留の違法は公訴提起の効力や原判決の正当性に影響を及ぼさないため、上告は棄却される。
実務上の射程
手続的違法が実体判決に及ぼす影響に関する判例である。答案上は、令状主義違反や違法な拘束があった場合でも、それが公訴棄却(刑訴法338条4号等)につながるかという文脈で使用する。本判決は、身束縛の違法と公訴提起の効力を切り離す原則的な立場を示している。
事件番号: 昭和24(れ)956 / 裁判年月日: 昭和24年10月4日 / 結論: 棄却
論旨第二點は、本件を檢事が賍物故買で起訴したのを原審が賍物牙保と認定したのは、訴追されない事實について判決をした違法があると主張する。しかし「裁判所は、その基本たる事實關係の同一性を害せざる限りは、公訴事實として摘示せられた事實とその態様において異り從つて適用法條を異にする事實を認定することができる」という當裁判所の判…