所論勾留状の被疑事実(窃盗)と所論起訴状の公訴事実(賍物故買)との間には、公訴事実の同一性ありと解するのが相当である。注、所論の (勾留状の被疑事実)被疑者は昭和三五年八月一六日午前一一時頃より同日午後四時〇分頃迄の間東京都品川区abの)c番地通信員A方において同人所有に係る現金六千円及びトランジスターラジオ(時価金八千円相当)一台並びに振袖(鶴とささ梅模様)一点外衣類四一点時価合計金二七万壱千円相当を窃取したものである。 (起訴状の公訴事実)第一、被告人Bは昭和三五年八月一六日頃東京都品川区ae丁目c番地A方において同人所有のトランジスターラジオ一台及び女物袷着物四〇点(時価合計約二六万五千円相当)を窃取し。第二、被告人Cは昭和三五年八月一九日頃東京都墨田区d町g丁目f番地h荘内D方においてBより同人が前記第一記載の通り窃取した来た前記トランジスターラジオ一台及び女物袷着物等四〇点をそれが賍品である事を知り乍ら代金約三万円で買取り以つて賍物を故買したものである。
公訴事実の同一性ありと解された事例。―勾留状の被疑事実(窃盗)と起訴状の公訴事実(賍物故買)―
刑法235条,刑法256条2項,刑訴法64条,刑訴法256条,刑訴法312条
判旨
勾留状の被疑事実と起訴状の公訴事実の間に公訴事実の同一性が認められる場合、当該勾留は起訴によって適法に継続し、事案の内容に照らして不当に長い期間でなければ違法とはならない。
問題の所在(論点)
被疑事実(窃盗)と公訴事実(賍物故買)の間に公訴事実の同一性が認められ、被疑者勾留の効力が被告人勾留として維持されるか。また、第一審判決まで166日間の勾留が不当に長いといえるか。
規範
被疑者勾留の効力が被告人勾留として継続するか否かは、勾留状の被疑事実と起訴状の公訴事実との間に「公訴事実の同一性」が認められるか否かによって決せられる(刑事訴訟法60条2項参照)。また、勾留期間が不当に長いか否かは、事案の内容(犯罪の性質や捜査の状況等)を総合的に考慮して判断する。
重要事実
被告人は当初、窃盗の被疑事実によって勾留されていたが、検察官は賍物(盗品)故買の公訴事実で起訴した。第一審判決が言い渡されるまで、勾留期間は通算166日間に及んだ。弁護人は、被疑事実と公訴事実が異なることから勾留が違憲・違法であり、また勾留期間も不当に長いと主張して上告した。
あてはめ
窃盗と賍物故買は、いずれも財産犯としての共通性を有し、対象物や日時場所等の基礎的事実関係において密接な関連があることから、両者の間には公訴事実の同一性がある。したがって、窃盗を理由とする勾留状による効力は、起訴によって適法に継続する。また、166日間という期間についても、本件事案の内容(窃盗・賍物故買という性質や審理状況等)に照らせば、直ちに不当に長い勾留とは認められない。
結論
本件勾留は適法に継続しており、憲法31条、34条、および刑訴法に違反しない。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
勾留の効力は「事件」単位で生じるという「事件単位の原則」を前提としつつ、その事件の範囲を公訴事実の同一性の範囲(刑訴法312条1項)まで広げて捉える実務上の運用を肯定したものである。答案上は、被疑事実と起訴事実が異なる場合の勾留の適法性を検討する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)58 / 裁判年月日: 昭和31年12月18日 / 結論: 棄却
被告人は昭和二九年三月二六、七日頃婦負郡a村b地内において架設しあつたA株式会社所有某管理にかかる三、二粍硬銅線二九貫五百匁位を窃取したとの主たる訴因である窃盗の事実と、被告人は同月二七日午前八時頃同郡同村bc駅南方百米位の草叢において二七、八才位の男より、三、二粍硬銅線二九貫五百匁位を、それが盗品であることの情を知り…