判旨
食糧管理法による食糧の流通規制は、生存権を規定した憲法25条に違反しない。また、併合罪の関係にある公訴事実のうち、一部の事実に大赦があった場合には、その部分について免訴を言い渡すべきである。
問題の所在(論点)
食糧管理法による食糧流通の制限が憲法25条(生存権)に違反しないか、および併合罪のうち一部について大赦があった場合の処理が問題となった。
規範
憲法25条は、国に対して国民の健康で文化的な最低限度の生活を保障する責務を課しているが、その具体的な実施方法は立法府の広範な裁量に委ねられている。したがって、公共の福祉の観点から食糧の流通を規制する食糧管理法の諸規定は、同条に違反しない。
重要事実
被告人は、食糧管理法に基づき制限されていた粳(うるち)玄米の携帯輸送、および大豆の輸送を行ったとして同法違反で起訴された。第一審および控訴審において有罪判決を受けた後、最高裁判所での審理中に、公訴事実のうち大豆輸送の点について、昭和27年政令第117号(大赦令)による大赦が実施された。
あてはめ
食糧管理法の違憲性については、既に確立された判例(昭和23年9月29日大法廷判決)を引用し、生存権の趣旨に反しないと判断した。次に、刑事手続上の処理として、被告人が行った2つの行為は併合罪の関係にあるが、大豆輸送の事実については大赦令が発布されたため、刑事訴訟法337条3号に基づき免訴すべきである。他方の粳玄米の輸送については大赦の影響を受けないため、これについてのみ罰金刑を科すのが相当である。
結論
食糧管理法は合憲である。大豆輸送の点は免訴とし、粳玄米の輸送については被告人を罰金5,000円に処する。
実務上の射程
憲法25条のプログラム規定説的性格を確認する文脈、および、判決確定前に大赦があった場合の免訴判決(刑訴法337条3号)の要否を確認する実務上の先例として活用される。
事件番号: 昭和29(あ)4017 / 裁判年月日: 昭和31年11月30日 / 結論: 棄却
所論食糧管理法、同法施行令及び同法施行規則の各規定が、憲法二五条の規定に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第二〇五号同年九月二九日大法廷判決、集二巻一〇号一二三五頁)の趣旨に照して明らかである。