判旨
不当な手段により作成された疑いのある供述調書であっても、裁判所がこれを判決の証拠として採用していない以上、判決に影響を及ぼす違法があるとは認められない。
問題の所在(論点)
拷問等の不当な手段により作成された疑いのある供述調書が証拠調の対象となった場合、それが判決の証拠として引用されていなくとも、直ちに判決に影響を及ぼす違法として上告理由となるか。
規範
特定の供述調書について証拠調が行われたとしても、直ちに裁判の心証の資料になったとは限らず、当該調書が判決の証拠として採用されていない場合には、たとえその作成過程に重大な違法(拷問等)があったとしても、原則として判決に影響を及ぼす違憲・違法(刑訴法405条)は認められない。
重要事実
被告人の弁護人は、司法警察員作成の被告人の供述調書が拷問によって作成されたものであると主張し、その証拠採用を違憲・違法として上告した。しかし、第一審判決の理由を確認したところ、当該調書は判決の証拠として引用されていなかった。
あてはめ
本件において、問題となっている司法警察員作成の供述調書は、第一審判決において証拠として採用されていない。裁判所が証拠として採用していない以上、当該調書の内容が裁判官の心証形成に影響を与え、判決の結論を左右したとは認められない。したがって、仮に弁護人の主張するように調書作成過程に拷問等の違法があったとしても、判決結果との因果関係は否定される。
結論
当該調書が判決の証拠とされていない以上、判決に影響を及ぼすこと明らかであるとは認められず、上告理由には当たらない。
実務上の射程
違法収集証拠の排除法則や自白排除法則が問題となる場面において、証拠能力に欠ける証拠が記録上に存在したとしても、それが判決の基礎(証拠)となっていない限り、判決の違法を導く理由にはならないという、手続的違反と判決結果の因果関係に関する実務的指針を示すものである。
事件番号: 昭和29(あ)3156 / 裁判年月日: 昭和30年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】拷問等の違法な捜査が行われたとの主張があっても、当該捜査に基づく供述調書が証拠として採用されておらず、かつ記録上拷問の事実が認められない場合には、上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人および弁護人は、警察官による拷問が行われた旨を主張して上告した。しかし、第一審および控訴審の判決におい…