第一審判決は、被告人の犯罪事実の認定につき、共同被告人及び被告人本人に宣誓を命じ、これを証人として供述させた公判廷の供述を断罪の資料としていないから、これを前提とする違法の主張も前提を欠き採用できない。
採証に関する法令違反の主張がその前提を欠く場合 −被告人及び共同被告人に宣誓させて証人尋問をした場合−
刑訴法411条,刑訴法317条,刑訴法318条
判旨
共同被告人及び被告人本人に対し宣誓を命じて証人として供述させたとしても、当該供述を犯罪事実の認定の資料としていないのであれば、その手続上の違法は判決に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
被告人本人や共同被告人に宣誓をさせ証人として供述させた手続に違法がある場合、そのことのみをもって判決を破棄すべき理由となるか。換言すれば、当該供述を証拠として用いていない場合に判決への影響が認められるか。
規範
訴訟手続に法違反があったとしても、その手続によって得られた証拠能力を欠く供述が犯罪事実の認定の資料として用いられていない場合には、判決の結果に影響を及ぼす違法(刑事訴訟法上の破棄理由)には当たらない。
重要事実
第一審判決において、裁判所が被告人A及び共同被告人に対し、宣誓を命じた上で証人として公判廷で供述させた。弁護人は、この手続が被告人の権利を侵害する訴訟法違反であるとして上告を申し立てた。しかし、第一審判決の理由を確認すると、当該宣誓供述は断罪の資料、すなわち犯罪事実認定の基礎としては採用されていなかった。
事件番号: 昭和26(あ)4866 / 裁判年月日: 昭和29年1月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠能力に欠ける証拠が証拠として採用された場合であっても、これを除外したとしても他の証拠によって判示事実を肯定できるのであれば、判決に影響を及ぼさない。また、刑訴法405条の上告理由に当たらない事項は上告を棄却する事由となる。 第1 事案の概要:被告人A、C、Dらが上告した事案。被告人Aの弁護人は…
あてはめ
本件では、被告人本人及び共同被告人に宣誓をさせて証人尋問を行うという、被告人の黙秘権や供述拒否権の保障に関わり得る手続が行われている。しかし、第一審判決は被告人の犯罪事実を認定するに際し、これらの宣誓供述を「断罪の資料としていない」。したがって、仮に当該証人尋問手続に違法があったとしても、判決の結論を導く根拠とはなっていないため、前提を欠く主張であるといえる。
結論
被告人及び共同被告人の宣誓供述が事実認定に用いられていない以上、判決に影響を及ぼす違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
被告人本人を証人として尋問することが許されないという大原則(被告人の地位と証人の地位の非互換性)を前提としつつ、証拠として不採用であれば手続違法は治癒される(あるいは破棄理由にならない)という実務的帰結を示す。答案上は、違法収集証拠や手続違憲の文脈で、判決への影響の有無を検討する際の参考となる。
事件番号: 昭和28(あ)1492 / 裁判年月日: 昭和28年7月16日 / 結論: 棄却
所論Aの第四回供述調書が記録に編綴されておらず虚無の証拠を断罪の資料に供した違法があつたとしても、原判決は右証拠を除いても被告人に対する判示犯罪事実は充分認定できるといつているのであつて、当裁判所においても、原判決の右判断は首肯できる。