所論Aの第四回供述調書が記録に編綴されておらず虚無の証拠を断罪の資料に供した違法があつたとしても、原判決は右証拠を除いても被告人に対する判示犯罪事実は充分認定できるといつているのであつて、当裁判所においても、原判決の右判断は首肯できる。
記録に編綴されていない虚無の証拠を断罪の資料に供した違法があつても判決に影響を及ぼさない一事例
刑訴法317条,刑訴法335条1項
判旨
違法な手続によって得られた証拠であっても、当該証拠を除外してもなお犯罪事実の認定が十分に可能である場合には、判決に影響を及ぼすべき法令の違反(刑訴法379条)には当たらない。
問題の所在(論点)
違法に収集された疑いのある証拠を事実認定に用いた場合において、当該証拠を排除しても他の証拠により有罪認定が可能であるとき、判決に影響を及ぼすべき法令の違反といえるか。
規範
控訴理由としての「判決に影響を及ぼすべき法令の違反」の有無を判断するに際しては、問題となる証拠を除外したとしても、他の適法な証拠によって犯罪事実を十分に認定できる場合には、当該違反は判決の結果に影響を及ぼさないものと解する。
重要事実
被告人の犯罪事実を認定するに際し、共犯者等の供述調書(Aの第4回供述調書)が証拠として用いられたが、弁護人は当該調書の作成過程等に違法があると主張して上告した。原判決(控訴審)は、仮に当該証拠に違法があったとしても、これを除外した他の証拠によって被告人の犯罪事実は十分に認定できると判断していた。
あてはめ
本件において、弁護人が主張する供述調書の作成過程に違法があったとしても、原判決が判示した通り、当該証拠を除いても他の証拠によって判示犯罪事実は十分に認定できる。したがって、当該証拠の採用が判決の結論を左右したとはいえず、原判決の判断は首肯できる。
結論
本件上告は、原判決に判決に影響を及ぼすべき法令の違反があるとは認められないため、棄却される。
実務上の射程
証拠排除法則や違法収集証拠排除法則の確立前の古い判例であるが、訴訟手続の法令違反が「判決に影響を及ぼすべき」か否かを判断する際の、証拠の重要性と有罪認定への影響度を測る枠組みとして参照され得る。ただし、現代の違法収集証拠排除法則の下では、違法の程度によっては他の証拠の有無にかかわらず排除が問題となる点に注意を要する。
事件番号: 昭和28(あ)48 / 裁判年月日: 昭和28年7月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白の補強証拠として、共同被告人の供述を用いることができる。これは、共同被告人との間に共犯関係があるか否かを問わず、互いに他の被告人の自白の補強証拠となり得る。 第1 事案の概要:被告人が検察官に対して自白した調書が存在する事案において、原判決はその自白を補強する証拠として、第一審における…