判旨
上告審において憲法違反を主張するためには、原則として原審において当該憲法違反の事実が主張・判断されている必要があり、かつ記録上その前提となる事実が認められなければならない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法上、原審で主張・判断されていない憲法違反の事実、および記録上認められない事実を理由として、上告を申し立てることができるか(上告適法の理由の有無)。
規範
上告審は事後審としての性質を有するため、憲法違反を上告理由とする場合には、①原審において当該主張がなされ、あるいは判断が示されていること、および②憲法違反の前提となる事実関係が訴訟記録によって客観的に認められることが必要である。これらを欠く場合は、適法な上告理由とはならない。
重要事実
被告人が憲法違反を主張して上告を申し立てた。しかし、当該憲法違反の根拠となる「強制等の事実」については、原審において全く主張されておらず、原判決においてもそれに関する判断はなされていなかった。また、訴訟記録を精査しても、被告人が主張するような強制等の事実は認められなかった。
あてはめ
本件において、弁護人が主張する憲法違反の前提となる「強制等の事実」は、原審での主張も判断も欠いている。また、記録を精査してもそのような事実は存在しないと認められる。したがって、憲法違反の前提を欠く主張であるといえ、適法な上告理由には当たらない。さらに、刑訴法411条の職権破棄事由を適用すべき特段の事情も認められない。
結論
本件上告は、適法な上告理由を欠くため、刑訴法408条により棄却される。
実務上の射程
上告理由の「憲法違反」が抽象的な主張に留まらず、具体的な事実関係に基づかなければならないこと、および原審までの主張の重要性を確認する判決である。答案作成上は、上告審の構造(事後審性)や上告理由の制限を論じる際の基礎となる。
事件番号: 昭和27(あ)5686 / 裁判年月日: 昭和28年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において主張されず、原判決が判断を示していない違憲の主張は、適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人が、第一審判決に憲法違反があるとして上告を提起した。しかし、当該憲法違反の事由は、第一審から第二審への控訴の段階では控訴趣意として主張されておらず、原判決(控訴審判決)に…