判旨
書面が証拠物ではなく証拠書類に該当するか否かは、その存在や状態ではなく、記載された内容(意義)が証拠となるかによって決まる。また、証拠の取捨判断の前提となる特別事情の有無は事実審の裁量に属し、判決文での説示を要しない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法上の「証拠書類」と「証拠物」の区別基準、および証拠の証明力を判断する際の「特別事情」に関する裁判所の説示義務の有無が問題となった。
規範
書面が「証拠書類」に該当するか「証拠物」に該当するかは、当該書面の存在や状態が証拠となるのではなく、書面の記載内容(意義)が証拠となるか否かによって区別される。また、証拠の証明力を左右する特別の事情の有無は、事実審裁判所の自由な合理的な裁量に委ねられており、判決書において必ずしもその有無を具体的に説示することを要しない。
重要事実
被告人の供述および多数の補強証拠に基づき犯罪事実が認定された事案において、被告人側が、供述の任意性の欠如や、証拠として採用された書面の性質(証拠物か証拠書類か)、および証拠の取捨判断に関する判断不尽を理由として上告を申し立てた。
あてはめ
本件において、問題となった書面はその存在や状態が重要なのではなく、そこに記載された意義内容が証拠として供されたものであるから、証拠物ではなく証拠書類にあたると解される。また、弁護人が主張する「特別事情」の存否については、証拠の取捨選択を行う事実審の合理的な裁量権の範囲内であり、裁判所が判決中でこれについて特段の理由を付さなかったとしても、違法な判断不尽があるとはいえない。
結論
書面の内容を証拠とする場合は証拠書類に該当する。また、証拠の取捨判断における特別事情の有無について判決での説示は不要であり、原判決に違法はない。
実務上の射程
証拠書類と証拠物の区別に関する古典的・基礎的な判例であり、証拠調べ手続の適法性を検討する際の基準となる。また、自由心証主義(刑訴法318条)に基づく事実認定において、認定の基礎とした個々の事情すべてを判決に書き出す必要がないことを示す実務上の指針となる。
事件番号: 昭和27(あ)6190 / 裁判年月日: 昭和29年4月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】供述録取書等の書面に契印が欠けている場合であっても、そのことのみをもって直ちに当該書面の証拠能力が否定されるものではない。 第1 事案の概要:被告人の有罪判決において、証拠として採用された録取書等の書面に対し、弁護人が契印の欠如を理由としてその証拠能力を争い、上告を申し立てた事案である。 第2 問…