そして原審では心身喪失の主張がなされたけれども所論の心身耗弱の主張はなされていないから、喪失の点について判断を与えた以上耗弱の点について判示しないからといつて、原判決に判断遺脱の違法ありとはいえない。
心神喪失の主張に対する判断をなし、心神耗弱の主張に対する判断を欠く判決の当否
刑法39条,刑訴法335条2項,刑訴法411条3号
判旨
被告人が心神喪失を主張し、裁判所がこれに対して判断を示した以上、主張のなかった心神耗弱について判示しなかったとしても判断遺脱の違法はない。
問題の所在(論点)
心神喪失の主張のみがなされた場合に、裁判所が心神耗弱の存否について判断を示さないことが、刑事訴訟法上の判断遺脱にあたるか。
規範
控訴審において特定の主張(心神喪失)がなされた場合、裁判所がその主張に対して判断を与えれば足り、当該主張に含まれない別の段階の事実(心神耗弱)についてまで判断を示す必要はない。
重要事実
被告人の弁護人は、原審において被告人が心神喪失の状態にあった旨を主張したが、心神耗弱の主張は予備的にもなされていなかった。原判決は心神喪失の点については判断を示し、これを排斥したが、心神耗弱の点については特段の判示をしなかった。これに対し、弁護人は心神耗弱について判断を示さないことは判断遺脱の違法であるとして上告した。
事件番号: 昭和26(あ)1263 / 裁判年月日: 昭和27年7月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条の上告理由に該当しない独自の主張や、原判決の事実誤認を争う主張は上告理由として認められず、職権調査の必要性がない限り棄却される。 第1 事案の概要:上告人は、第一審判決が「虚無の証拠」によって犯罪事実を認定したという新たな事実を主張し、これを看過した原判決には憲法違反があるとして…
あてはめ
本件において、原審でなされた主張は心神喪失の点に限定されていた。裁判所は、提示された主張である心神喪失の存否について明確に判断を下している。心神耗弱は心神喪失とは異なる段階の主張であり、当事者から明示的な主張がなされていない以上、裁判所がこれについて判断を示さなかったとしても、審判の対象に対する判断を漏らしたものとはいえない。したがって、判断遺脱の違法があるとする所論は前提を欠く。
結論
原判決に判断遺脱の違法は認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
責任能力の主張において、より重い段階(喪失)のみを主張した場合、裁判所には軽い段階(耗弱)を職権で判断し判示する義務まではないことを示唆する。実務上は、念のため予備的に心神耗弱を主張しておくべきであるという教訓を含む。
事件番号: 昭和24(れ)2777 / 裁判年月日: 昭和26年8月17日 / 結論: その他
一 原審第七回公判において原審は被告人Aに対する弁論を分離したことは所論のとおりである。そして第九回公判において被告人Aに対する弁論を終結したのであるが原審は右分離した事件を再び併合して判決したものであることは原判決前文において併合して判決すると判示していることから明らかである。裁判所は職権によつて弁論の分離併合が出来…
事件番号: 昭和56(あ)1434 / 裁判年月日: 昭和57年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、原判決が判断した証拠物の証拠能力に関する法的判断および事実認定について、弁護人が憲法35条違反や判例違反を主張したものの、実質的には単なる法令違反や事実誤認の主張に過ぎないとして、刑訴法405条の上告理由に当たらないと判断したものである。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、証拠物の証拠…