判旨
複数の法律が、立法目的、保護法益、および構成要件を異にする場合、それらに違反する一個の行為は、刑法54条1項前段の観念的競合(一個の行為にして数個の罪名に触れる場合)として処断される。
問題の所在(論点)
一個の行為が複数の異なる法律(本件では政令165号と臨時物資需給調整法)の構成要件に該当する場合、それらを観念的競合として処断することは可能か。特に、二重処罰の禁止等との関係が問題となる。
規範
一個の行為が複数の罪名に触れる「観念的競合」(刑法54条1項前段)にあたるか否かは、当該各罪の(1)立法目的、(2)保護法益、および(3)構成要件の差異によって判断される。これらが互いに異なる場合には、各罪は独立した罪名として成立し、併合罪ではなく一個の行為による数罪の関係となる。
重要事実
被告人Aは、連合国占領軍の財産である石油製品を不正に扱ったとして、昭和22年政令第165号(連合国占領軍に供する物資等の不法所持等の罪)および臨時物資需給調整法の両法違反に問われた。弁護人は、これら複数の法律を適用することが憲法31条や39条(二重処罰の禁止等)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
昭和22年政令第165号と臨時物資需給調整法を比較すると、両者は全くその立法目的を異にしている。また、これに伴い、それぞれの法律が守ろうとする保護法益および犯罪の成立要件である構成要件も互いに異なるものである。したがって、被告人が石油製品に関して行った一個の行為は、それぞれの法律が規定する独自の罪名に触れるものと評価できる。これは憲法違反ではなく、刑法上の観念的競合として、重い方の刑で処断すべき事案である。
結論
被告人の行為は、立法目的・法益・構成要件を異にする両法のいずれにも違反するため、一個の行為にして数個の罪名に触れる場合に当たる。これらを観念的競合として処断した原判決に違法はない。
事件番号: 昭和24(れ)1728 / 裁判年月日: 昭和25年7月13日 / 結論: 破棄自判
一 第一審判決は、昭和二三年政令第一六五號違反の罪と古物商取締法違反の罪を、想像的競合をなす一罪として重い政令違反罪の刑によつて、懲役一年及び罰金三千圓を言渡した。これに對し第二審判決は右二個の罪を併合罪と見て所論のような各別の刑を併科したのである。しかしながら、第二審の罰金刑の合算額は第一審の罰金額より五千圓だけ多く…
実務上の射程
一個の行為が多方面の法規制に抵触する場合の罪数判断の基準を示す。答案上では、特別法と一般法の関係(法条競合)ではなく、法益や目的が重ならない複数の法規に触れる場合には「観念的競合」として処理すべきことの根拠として利用できる。
事件番号: 昭和24(れ)2741 / 裁判年月日: 昭和25年3月16日 / 結論: 棄却
政令第一六五號違反の罪は、占領軍物資であることを認識してこれを買受ける場合に成立し、賍物故買罪は賍物であることを認識してこれを買受ける場合に成立する。この二つの認識が同時に存在する場合には二つの罪が成立するが、その中一つの認識しか存在しない場合には一つの罪のみが成立することは當然である。この兩罪が起訴された場合において…
事件番号: 昭和23(れ)956 / 裁判年月日: 昭和24年5月18日 / 結論: 破棄差戻
一 一事不再審の原則は判事判決の既判力の一作用に外ならない。元來判決の既判力というものは一旦判決によつて一定の法律關係(刑罰權又は私權等)の存否が確定された以上原則として、爾後は法律上有効にこれを變動せしめないということをその本質とするのである。 二 民事においては裁判所は判決により確定された法律關係については、その判…
事件番号: 昭和23(れ)2115 / 裁判年月日: 昭和24年6月7日 / 結論: 棄却
原判決は、明らかに「連合國占領軍兵士から同兵士の財産であるサツカリン」を買受け又は販賣の斡旋を依頼せられ受取り、所持した事實を認定したものであるから、該サツカリンが前記政令第一條に掲げる財産中に包含されていることは毫も疑いがない。
事件番号: 昭和26(あ)1052 / 裁判年月日: 昭和28年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法18条にいう「奴隷的拘束」とは、人格を無視し、その意思にかかわらず束縛する状態に置くことを指し、占領軍の財産を所持する行為を処罰することはこれに当たらない。また、共同審理を受けていない共犯者の供述は、それだけで直ちに証拠能力を欠くものではない。 第1 事案の概要:被告人が占領軍(進駐軍)物資を…