判旨
検察官の嘱託に基づき、裁判官の発した鑑定処分許可状を得て作成された死体鑑定書は、適法な鑑定手続によるものとして証拠能力を有する。
問題の所在(論点)
検察官の嘱託に基づき、裁判官の許可(鑑定処分許可状)を得て作成された鑑定書の証拠能力が認められるか。特に、鑑定の端緒となる許可手続の適法性が問題となる。
規範
鑑定の嘱託(刑訴法223条1項)に基づく死体の解剖等、強制の処分を伴う場合には、裁判官の発する鑑定処分許可状(同法225条1項、4項、168条1項)を必要とする。これらの適法な手続を履践して作成された鑑定書は、証拠調手続における同意(同法326条1項)等を経て、証拠として許容される。
重要事実
検察事務官の請求により裁判官が発した鑑定処分許可状に基づき、検察官の嘱託を受けた医師Aが、被害者Bの死体を解剖して鑑定書を作成した。公判において検察官が当該鑑定書の証拠調べを請求した際、被告人および共犯者は証拠とすることに同意し、弁護人も異議がない旨を陳述した。これに対し、被告人側は上告審において、当該鑑定書が「裁判所の許可なく作成されたものである」としてその証拠能力を争った。
あてはめ
本件鑑定書は、長野地方裁判所岩村田支部裁判官が発した鑑定処分許可状に基づき作成されている。これは、検察事務官の請求および検察官の嘱託という適法な手続過程を経ており、被告人が主張するような「無許可の鑑定」には当たらない。また、公判手続においても被告人および弁護人が証拠供用について同意の意思表示をしており、刑訴法上の証拠調手続も適法に完了していると評価できる。
結論
本件鑑定書は適法な手続に基づき作成されたものであり、証拠能力が認められる。したがって、証拠採用を維持した原判決に違法はない。
実務上の射程
事件番号: 昭和28(あ)3203 / 裁判年月日: 昭和30年12月2日 / 結論: 棄却
公職選挙法第四九第三号、同法施行令第五二条第一項第三号に基いて作成される選挙人に対する医師の証明書は、その内容が人の健康上の状態に関する判断を包含する限り医師法第二〇条にいわゆる「診断書」と解すべきである。
捜査段階における鑑定嘱託に伴う強制処分(死体解剖等)につき、鑑定処分許可状の存在が証拠能力を担保する基礎となることを示している。実務上は、鑑定受託者が作成した書面(321条4項)の前提として、許可状に基づく適法な手続が履践されているかを確認する際の根拠となる。
事件番号: 昭和30(あ)3463 / 裁判年月日: 昭和33年5月9日 / 結論: 棄却
診断書には正規の鑑定人の作成した書面に関する刑訴三二一条四項の規定が準用されるものと解すべきである
事件番号: 昭和42(あ)2188 / 裁判年月日: 昭和43年2月8日 / 結論: 棄却
刑訴法第三二六条第一項の同意のあつたポリグラフ検査結果回答書は、その検査結果が検査者の技術経験、検査器具の性能に徴して信頼できるものであり、かつ、検査の経過および結果を忠実に記載したものであるとき(原判文参照)は、証拠能力がある。
事件番号: 昭和45(あ)471 / 裁判年月日: 昭和47年2月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の検察官に対する供述調書の任意性を肯定した原審の判断が相当であるとした事案である。 第1 事案の概要:被告人Aが検察官に対して行った供述調書について、その任意性が争点となった。弁護人は、当該供述調書には任意性がない旨を主張して上告したが、原審は記録を精査した上で、任意性を疑うべき点はないと判…