公職選挙法第四九第三号、同法施行令第五二条第一項第三号に基いて作成される選挙人に対する医師の証明書は、その内容が人の健康上の状態に関する判断を包含する限り医師法第二〇条にいわゆる「診断書」と解すべきである。
公職選挙法第四九条第三号、同法施行令第五二条第一項第三号に基いて作成される医師の証明書(不在投票者のための証明書)は医師法第二〇条にいわゆる「診断書」にあたるか
公職選挙法49条,同法施行令52条,医師法20条,刑法160条
判旨
医師法20条にいう「診断書」とは、医師の診察の結果に関する判断を表示して人の健康状態を証明する書面を指す。したがって、公職選挙法に基づき交付される、選挙当日投票所に行けない旨を証明する医師の証明書も、医師自らの診察を経て作成されなければならない。
問題の所在(論点)
公職選挙法及び同法施行令に基づき作成される、選挙当日投票所に行くことが困難である旨の医師の証明書が、医師法20条にいう「診断書」に該当するか、またその作成には医師自らの診察を要するか。
規範
医師法20条にいう「診断書」とは、医師の診察の結果に関する判断を表示して人の健康上の状態を証明する部分を包含する書面を指すと解すべきである。また、同条は医師に対し、自ら診察を行わずに診断書を交付することを禁止しているため、かかる証明書を作成する際には、必ず医師自ら対象者を診察した上でこれを作成交付することを要する。
重要事実
被告人は、公職選挙法49条3号、同法施行令52条1項3号に基づき、選挙人が老衰のため選挙当日自ら投票所に行って投票することができない見込みである旨の医師の証明書を作成した。しかし、当該証明書の作成に際して、医師自らによる直接の診察が行われていたかどうかが争点となり、原判決は医師による直接の診察を欠く作成を違法と判断したため、被告人が上告した。
あてはめ
本件証明書は、選挙人の身体的状況(老衰等)により投票所への出頭が困難であるという、医師の診察の結果に基づく健康状態の判断を表示し、これを証明するものである。このような性質を持つ書面は、医師法20条が規定する「診断書」の定義を充足すると解される。したがって、たとえ「老衰のため投票所に行けない見込み」という内容であっても、健康状態の証明である以上、医師法20条の規定が適用され、医師自らの診察を欠いて作成・交付することは許されない。
結論
本件証明書は医師法20条の診断書に該当し、医師自らの診察なしに作成・交付することはできない。
実務上の射程
医師法20条の「診断書」の定義を、文言上の形式に捉われず、実質的に「医師の判断による健康状態の証明」が含まれるか否かで広範に捉えるべきとする指針を示す。行政手続や選挙手続等で用いられる各種証明書であっても、医学的判断を含む限り同条の規制が及ぶ点に実務上の意義がある。
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