判旨
鉄道手荷物の荷札を管理者に無断で貼り替えて自己の支配下へ輸送させる行為は、占有の移転を伴う窃取にあたり、窃盗罪(刑法235条)が成立する。
問題の所在(論点)
鉄道輸送中の手荷物の荷札を無断で貼り替えて、本来の宛先とは異なる自己の支配領域に送付させる行為が、窃盗罪(刑法235条)の「窃取」に該当するか。
規範
窃盗罪の「窃取」とは、占有者の意思に反して、財物に対する占有者の占有を排除し、自己または第三者の占有に移すことをいう。輸送中の手荷物において、本来の宛先を示す荷札を剥ぎ取り、自己が支配する場所へ送付されるよう偽の荷札を貼付する行為は、管理者の意図しない態様で財物の物理的支配を奪い、自己の計算において運送の過程を操作するものであるから、占有の移転が認められる。
重要事実
被告人等は、鉄道輸送中の手荷物について、その管理者の不知の間に、本来貼られていた荷札を剥ぎ取った。その上で、当該荷物を被告人A方に輸送させるような宛先を記載した荷札に貼り替えた。その結果、荷物は被告人A方に到着し、またはその輸送の途中で発見された。
あてはめ
鉄道手荷物の管理者は、荷札の情報に基づいて荷物を管理・輸送している。被告人等がこの荷札を「管理者不知の間に剥ぎ取り」、自己の元へ届くよう「荷札につけ替え」た行為は、管理者の占有を排除する行為といえる。さらに、これにより荷物を「被告人方に到着せしめ、又は同被告人方に輸送の途中」とした事実は、被告人が荷物の運送過程を掌握し、自己の占有下に移したものと評価できる。したがって、一連の行為は「窃取」にあたると解される。
結論
被告人らの行為には窃盗罪が成立する。
実務上の射程
間接正犯的あるいは作為的手法を用いた占有移転の事例である。運送業者という占有補助者(あるいは占有機関)を、虚偽の指示(荷札)によって利用し、占有を移転させる点に特徴がある。試験対策としては、実行着手時期(荷札貼替時)や既遂時期(発送時か到着時か)の検討、および詐欺罪との区別(欺罔の相手方と処分意思の有無)において参照されるべき判例である。
事件番号: 昭和26(あ)2691 / 裁判年月日: 昭和28年2月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未遂罪の判決において刑法243条を適用した以上、同法43条を重ねて挙示する必要はなく、また未遂による刑の減軽は裁判所の任意的裁量に属する。 第1 事案の概要:被告人が窃盗に着手したが既遂に至らなかった事案(障害未遂)において、第一審判決は刑法243条(窃盗未遂)を適用して有罪としたが、刑法43条の…