一 第二審判決に對する上告において、第一審判決の違法を主張することは、適法な上告理由にならない。 二 車掌が乘務中の貨物列車においてこれに積載されている荷物を不正に領得する行爲は窃盜罪を構成する。
一 第一審判決の違法を理由とする第二審判決に對する上告 二 車掌の所謂荷拔行爲と窃盜罪
刑訴法408條,刑法235條
判旨
鉄道荷扱手や車掌が、乗務中の列車内に積載・輸送されている荷物を不正に領得する行為は、業務上横領罪ではなく窃盗罪を構成する。
問題の所在(論点)
鉄道の乗務員が、自己の乗務する列車に積載・輸送中の荷物を不正に領得した場合、当該荷物の占有が乗務員にあると認められ業務上横領罪となるのか、それとも依然として管理者(国鉄等)の占有下にあり窃盗罪となるのか、刑法235条の「窃取」の意義が問題となる。
規範
特定の場所において管理・輸送されている他人の財物を領得する際、その財物が行為者の占有下にあると認められない場合には、窃盗罪が成立する。管理者の実力支配が及ぶ列車内の積荷をその乗務員が奪う行為は、特段の事情がない限り、占有の移転を伴う窃盗罪にあたる。
重要事実
鉄道荷扱手である被告人Aは、鉄道荷扱専務車掌である共犯Bと共謀し、昭和22年5月16日、乗務中の山陽線上り貨物列車が駅に停車中、当該貨車に積載・輸送されていた柳行李(衣類入り)および竹行李(衣類入り)を窃取した。
あてはめ
被告人Aらは鉄道荷扱手および車掌として列車に乗務していたが、列車に積載された荷物は鉄道当局の管理下にあり、個々の乗務員に独自の占有が認められるものではない。本件において、被告人らが共謀して輸送中の柳行李等を持ち出した行為は、管理者の占有を排除して自己の占有に移したといえる。したがって、委託関係に基づく占有を前提とする横領罪ではなく、窃盗罪の構成要件を充足する。
結論
乗務員が輸送中の積荷を領得する行為は、窃盗罪を構成する。被告人Aの行為について窃盗罪の成立を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
本判決は、業務上の地位にある者が管理・輸送中の物を奪った場合に、占有の所在を厳格に判断し、補助者にすぎない者の領得行為を窃盗と断じた大審院以来の判例を維持したものである。答案上は、支配的占有(管理者)と補助的占有(従業員)の区別が問題となる場面で、占有の移転を肯定する根拠として引用できる。
事件番号: 昭和25(あ)741 / 裁判年月日: 昭和26年3月20日 / 結論: 棄却
原判決の維持する第一審判決は、その判示事実と判決挙示の証拠とを対照して考えると、被告人等および第一審相被上告人Aは小運送業を営み、B通運株式会社C支店の常傭として、同会社C支店長Dの保管に係る水粳玄米を同支店倉庫から食糧配給公団E支所精米所へ運搬する労務に従事中、判示のようにその運搬途上においてこれを、窃取したとの事実…