原審が被告人に対し弁護人の選任に関する通知をしなかつたからとて所論憲法の規定に違反しないことは大法廷判決(昭和二四年(れ)第二三八号同年一一月三〇日判決)の趣旨に徴し明らかであり、すでに当裁判所に同趣旨の判決がある。(昭和二五年(あ)第二四三一号同二六年五月一五日第三小法廷判決)。それゆえ、論旨は理由がない。
被告人に対し弁護人選任に関する通知をしなかつたことの合憲性
憲法34条,憲法37条,刑訴法272条
判旨
勾留手続に違法があっても、その違法を理由として本案判決の破棄を求めることはできない。また、弁護人選任権に関しては、裁判所がその行使の機会を与え、妨げなければ足り、被告人に対し弁護人選任に関する個別の通知をしないことは憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 勾留手続の違法が、本案判決に対する独立した上告理由(刑事訴訟法405条等)となるか。2. 裁判所が被告人に対して弁護人選任の通知を行わなかったことは、憲法37条3項に違反するか。
規範
1. 勾留手続等の公訴提起後の手続に違法があったとしても、そのこと自体は判決の基礎となるべき事実の認定や法令の適用に直接影響を及ぼすものではないため、原則として上告理由とはならない。2. 憲法37条3項が保障する弁護人依頼権について、裁判所は被告人が自らその権利を行使する機会を確保し、その行使を妨げなければ足り、被告人に対して弁護人選任に関する特段の通知を行う義務までは負わない。
重要事実
被告人は、捜査段階での勾留延長を経て起訴された後、裁判所により勾留更新決定が繰り返された。被告人は、これらの一連の勾留手続には違法があり憲法に違反すると主張した。また、原審において被告人に対し弁護人の選任に関する通知がなされなかったことが、憲法上の弁護人依頼権を侵害するものであるとして、原判決の破棄を求めて上告した。
あてはめ
1. 勾留手続の適法性について検討するに、本件では適法に勾留状が発付され、期限内に公訴が提起されており、その後の勾留更新も適法になされているため、そもそも手続に違法はない。仮に手続に違法があるとしても、大法廷判決の先例によれば、勾留手続の瑕疵は本案判決を左右する事由にはならず、上告理由とならない。2. 弁護人依頼権について、裁判所は被告人の権利行使を妨げておらず、行使の機会を保障しているといえる。本件で原審が選任の通知を行わなかったとしても、被告人が自ら権利を行使することを何ら阻害するものではないため、憲法違反とは認められない。
結論
本件勾留手続に違法はなく、仮に違法があったとしても上告理由とはならない。また、弁護人選任に関する通知を欠いたことも憲法に違反しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事手続における「手続の違法と判決への影響」という文脈で活用できる。勾留等の身分拘束手続の違法は、原則として本案判決の当否には影響しないという理論(違法の承継の否定)の根拠となる。また、弁護人依頼権の保障が「機会の付与」という消極的側面にあることを示す初期の重要判例である。
事件番号: 昭和23(れ)65 / 裁判年月日: 昭和23年7月14日 / 結論: 棄却
本件勾引状と勾留状とが紛失して記録に綴込まれていないこと並びに被告人が昭和二一年七月八日勾留せられ同月三一日附で辯護人徳岡二郎から保釋の申請があつたので第一審判決宣言の日である同年八月五日保釋によりその翌日出所したことは記録により明である。そこで假に所論がすべて肯認すべきもので被告人が勾引状によらないで違法に勾引勾留せ…