本件勾引状と勾留状とが紛失して記録に綴込まれていないこと並びに被告人が昭和二一年七月八日勾留せられ同月三一日附で辯護人徳岡二郎から保釋の申請があつたので第一審判決宣言の日である同年八月五日保釋によりその翌日出所したことは記録により明である。そこで假に所論がすべて肯認すべきもので被告人が勾引状によらないで違法に勾引勾留せられ、その儘違法に保釋の日迄勾留を繼續せられたとしても、夫は別な救濟の方法によるべきことであつて、右の各違法は本件に於ては第二審判決に影響を及ぼさないことは明白である。第二審判決從つて又これを是認して被告人の上告を棄却した原上告判決には日本國憲法に違反する點は存しない。
違法な勾引勾留と判決の合憲性
憲法34條,刑訴法411條
判旨
被告人の身柄拘束手続に違法があったとしても、その違法は判決に影響を及ぼさないため、別途の救済方法によるべきであり、上告理由にはならない。また、憲法81条の「処分」とは立法または行政行為を指し、個別の裁判や司法処分を含まない。
問題の所在(論点)
勾引・勾留という身柄拘束手続の違法が、本案判決に対する上告理由(判決に影響を及ぼすべき法令の違反)となるか。また、司法処分としての勾留が憲法81条にいう違憲審査対象としての「処分」に該当するか。
規範
刑事手続における身柄拘束の違法は、判決の基礎となる証拠の収集手続等に直接関連しない限り、判決そのものの正当性を左右するものではなく、判決に影響を及ぼす事由には当たらない。また、憲法81条にいう「処分」とは、行政処分等を指し、裁判所による個別の司法処分(勾留等)は含まれない。
重要事実
被告人の勾引状および勾留状が紛失しており、記録に綴じ込まれていなかった。被告人は、勾引・勾留の手続が違法であるにもかかわらず保釈の日まで拘束が継続されたと主張し、憲法違反および刑事訴訟法違反を理由として再上告を申し立てた。
あてはめ
仮に被告人の主張通り、勾引状や勾留状によらない違法な拘束が継続されていたとしても、それは判決そのものの当否に影響を及ぼす性質の違法ではない。このような違法に対しては、抗告やその他の救済手段によって争われるべきものである。また、憲法81条の「処分」は、立法・行政の行為を対象とする司法審査権を定めたものであり、司法固有の領域における個別の手続的判断(司法処分)は、訴訟法上の上訴手続等によって処理されるべき事柄である。
結論
被告人の身柄拘束に違法があったとしても、判決に影響を及ぼさないため、上告を棄却する。
実務上の射程
強制捜査や身柄拘束等の付随的・派生的手続の違法が、必ずしも本案判決を破棄すべき理由にはならないことを示す。公判手続と捜査・拘束手続の分離を意識した起案において、手続違法の重大性が判決に及ぼす影響を論じる際の論拠となる。
事件番号: 昭和25(あ)2254 / 裁判年月日: 昭和27年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】司法警察員から検察官への被疑者送致手続において、刑事訴訟法203条1項の規定に違反する手続上の不備があったとしても、そのこと自体は直ちに判決に影響を及ぼすものではないため、上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人は司法警察員によって逮捕され、その後検察官に送致されたが、その送致手続において…
事件番号: 昭和25(あ)2172 / 裁判年月日: 昭和27年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留手続の違法は、判決そのものの違法を理由とする上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が勾留手続の違法を理由に上告を申し立てた。弁護人は、当該手続の違法が憲法に違反するものであると主張して上告理由としたが、判決そのものの適否ではなく、捜査・公判段階における身分拘束手続の瑕疵を問題とする…