判旨
司法警察員から検察官への被疑者送致手続において、刑事訴訟法203条1項の規定に違反する手続上の不備があったとしても、そのこと自体は直ちに判決に影響を及ぼすものではないため、上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
司法警察員の検察官に対する被疑者送致手続において、刑訴法203条1項違反の違法があった場合、それが直ちに判決に対する不服申立事由(上告理由)となるか。
規範
刑事訴訟法203条1項の送致手続に違反があったとしても、それが当然に被告人の有罪・無罪や量刑といった「判決」そのものに影響を及ぼすものとは解されない。したがって、当該違反は判決に対する適法な不服申立事由(刑訴法405条等)には当たらない。
重要事実
被告人は司法警察員によって逮捕され、その後検察官に送致されたが、その送致手続において刑事訴訟法203条1項が定める手続的要件に違反があったと主張して上告した。しかし、当該事実は原審(控訴審)では主張されておらず、原審の判断を経ていない事項であった。また、送致手続の適法性と判決の妥当性との関係が争点となった。
あてはめ
本件において、仮に司法警察員が刑訴法203条1項所定の送致手続に違反した事実があったとしても、それは判決に至るまでの先行する捜査段階の手続的瑕疵にとどまる。このような手続上の違法は、判決の基礎となる事実認定や法令の適用を左右するものではなく、判決に影響を及ぼすべき違法とは認められない。また、原審において主張されていない事項であることも考慮すれば、違憲の主張も前提を欠く。
結論
被疑者送致手続の違法は、判決に影響を及ぼすものではないため、適法な上告理由にはならない。上告棄却。
実務上の射程
逮捕・勾留等の身体拘束手続に違法がある場合でも、それが公訴提起や判決の効力に当然には影響しないという「手続違法の連鎖」を否定する論理として機能する。違法収集証拠排除法則や公訴棄却の議論と峻別し、捜査段階の瑕疵が直ちに「判決の違法」に直結しないことを示す際に引用すべき判例である。
事件番号: 昭和23(れ)65 / 裁判年月日: 昭和23年7月14日 / 結論: 棄却
本件勾引状と勾留状とが紛失して記録に綴込まれていないこと並びに被告人が昭和二一年七月八日勾留せられ同月三一日附で辯護人徳岡二郎から保釋の申請があつたので第一審判決宣言の日である同年八月五日保釋によりその翌日出所したことは記録により明である。そこで假に所論がすべて肯認すべきもので被告人が勾引状によらないで違法に勾引勾留せ…
事件番号: 昭和25(あ)2172 / 裁判年月日: 昭和27年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留手続の違法は、判決そのものの違法を理由とする上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が勾留手続の違法を理由に上告を申し立てた。弁護人は、当該手続の違法が憲法に違反するものであると主張して上告理由としたが、判決そのものの適否ではなく、捜査・公判段階における身分拘束手続の瑕疵を問題とする…