原判決判示第二及び第三の事実によれば、被告人は鮮魚商であつて前後五回に亘り冷凍あじ、さば合計一、七八五貫をA冷凍工業株式会社B工場より買入れた上、前後二一回に亘り冷凍魚の内一、二六八貫を鮮魚小売組合、共同販売所その他小売業者に売渡したものであるから、原判決が、被告人の右業態に徴し、その買入及び売却の所為を以て、卸売業者としてこれをなしたものと認め、右冷凍魚につき定められた卸売業者販売価格に照し、その統制額違反を論じたことはまことに相当であるといわなければならない。
鮮魚商たる被告人の鮮魚販売の業態を卸売業者と認めて卸売業者販売価格を適用した事例
物価統制令3条,昭和22年9月1日物価庁告示532号,昭和23年4月19日物価庁告示230号,昭和23年8月11日物価庁告示647号
判旨
被告人が鮮魚商として大量の冷凍魚を買い入れ、多数回にわたり小売業者等へ転売した行為は、その業態に照らし卸売業者としての行為と認められ、卸売価格の統制額違反を構成する。また、販売価格統制額は取引価格の最高制限を定めるものであり、転売経費の存在は統制額違反の成否を左右しない。
問題の所在(論点)
被告人による冷凍魚の買い入れおよび転売行為が、物価統制令等における「卸売業者」としての行為に該当するか。また、転売経費の存在が統制額違反の成否に影響を及ぼすか。
規範
特定の取引が卸売業者としての行為に該当するか否かは、主体の職業的性質(業態)や、買い入れ・売却の数量、回数、相手方等の客観的な態様を総合して判断する。また、販売価格統制額は取引価格の最高制限を定めたものであり、転売に伴う輸送経費等の必要性は、統制額遵守の義務を免れさせるものではない。
重要事実
鮮魚商である被告人が、5回にわたり冷凍あじ・さば計1,785貫を冷凍工業会社から買い入れ、その後21回にわたりその一部である1,268貫を鮮魚小売組合や共同販売所、その他の小売業者に売り渡した。被告人は、転売に輸送経費等を要するため統制額を遵守すると営利の余地がないと主張し、卸売価格の適用を争った。
事件番号: 昭和25(れ)1311 / 裁判年月日: 昭和26年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令9条の2にいう「不当に高価なる額」とは、同種又は類似物資の統制価格を参酌し、社会経済秩序維持の観点から適正と認められる価格を標準として判断すべきである。本件のように卸売に類する業態の場合、卸売業者販売価格の統制額を基準とすることは正当である。 第1 事案の概要:被告人が綿織物天竺を販売し…
あてはめ
被告人は鮮魚商という業態にありながら、5回で1,785貫という多量を買い入れ、21回にわたって小売業者らへ転売している。この買い入れ・売却の回数および数量、さらに転売先が小売業者等であるという客観的事実に徴すれば、被告人の行為は実質的に「卸売業者」としてなされたものと評価できる。さらに、統制額は最高制限額であるから、経費がかさみ営利が損なわれるという事情は、最高制限額を超えて取引することを正当化する理由にはならない。
結論
被告人の行為は卸売業者としての販売行為にあたり、その販売価格が卸売価格の統制額を超えている以上、統制額違反が成立する。
実務上の射程
物価統制違反等の行政刑法分野において、主体の属性(卸売か小売か等)が形式的な届出等の有無ではなく、実際の取引規模や回数、相手方といった客観的な「業態」によって実質的に判断されることを示した。実務上は、形式上は小売商であっても、大量転売等の実態があれば卸売価格の適用を受けることを論証する際に有用である。
事件番号: 昭和25(れ)1037 / 裁判年月日: 昭和25年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑法等の罰則規定における「業務に属する者」とは、必ずしも業務行為として当該行為を行った者に限られず、売買の主体と利益享受者が別人であっても適用される。また、公訴事実に記載された売主の氏名・名称が認定事実と異なっていても、日時、目的物、価額等の主要な要素が同一であれば、公訴事実の同一性が認められる…
事件番号: 昭和24(れ)2381 / 裁判年月日: 昭和26年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品等関与罪における『譲受け』の際の価格が社会通念上不相当であるか否かの認定について、証拠に基づき認定された買受価格と統制額との対比により判断することは、証拠に基づかない認定には当たらない。 第1 事案の概要:被告人両名は、本件物品を買い受けた。原審は、当該物品の買受価格を証拠によって認定した上で…
事件番号: 昭和24(れ)445 / 裁判年月日: 昭和25年10月6日 / 結論: 棄却
一 水産業を目的とする株式会社の発起人等が、右会社の目的たる業務に必要な資材として、指定生産資材在庫調整規則所定の生産資材を、県から払下げを受け又は現物出資として給付を受けて所有保管していたときは、右発起人等は、同規則第三条にいわゆる「業務に関して」同規則所定の「指定生産資材を所有する者(以下事業者という)」にあたる。…
事件番号: 昭和26(あ)511 / 裁判年月日: 昭和27年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧物価統制令等における「営業」の意義に関し、営利の目的をもって有償的譲渡(販売)を反復継続する意思で行う場合には、仕入行為が反復されることは要件とならない。 第1 事案の概要:被告人が、営利の目的をもって有償的譲渡(販売行為)を反復して行った事案。弁護人は、販売行為のみならず仕入行為も反復してなさ…