判旨
旧刑法等の罰則規定における「業務に属する者」とは、必ずしも業務行為として当該行為を行った者に限られず、売買の主体と利益享受者が別人であっても適用される。また、公訴事実に記載された売主の氏名・名称が認定事実と異なっていても、日時、目的物、価額等の主要な要素が同一であれば、公訴事実の同一性が認められる。
問題の所在(論点)
1. 法条にいう「業務に属する者」の意義および適用範囲(業務行為性や利益享受の主体との同一性の要否)。2. 公訴事実における売主の名称が相違する場合の公訴事実の同一性(刑事訴訟法上の訴因変更の要否、あるいは認定の許容範囲)。
規範
1. 罰則規定の対象となる「業務に属する者」とは、当該行為を業務として行った者に限定されない。また、取引の主体と、それにより生じる利益の享受者が同一人であることを要しない。2. 公訴事実の同一性は、日時、場所、目的物、価額、相手方等の諸要素を総合的に考慮して判断し、一部の要素(売主の名称等)に相違があっても、その他の主要な要素が共通していれば認められる。
重要事実
被告人が行った売買行為に関し、適用法条の「業務に属する者」に該当するかが争われた。具体的には、被告人が業務行為として行ったわけではない点、および売買の主体と利益享受者が別人である点から、罰則の適用が否定されるべきと主張された。また、起訴状に記載された売主(会社)の名称と、原審が認定した売主の名称が異なっていたため、公訴事実の同一性の有無が問題となった。なお、売買の日時、目的物、価額、買主等の事実に相違はなかった。
あてはめ
1. 法文上「業務に属する者」と規定されており、「業務行為として為した者」とはされていない。したがって、業務行為そのものに限らず、その地位にある者の行為として広く含まれる。また、売買主体と利益享受者が別人であっても、罰則の適用を妨げるものではない。2. 本件では、起訴状記載の事実と原審認定事実の間で「売主たる会社」のみが異なっている。しかし、売買の日時、目的物、価額、買主、附随負担といった他のすべての要素において差異が認められない。このような場合、事実の核心部分において共通性があり、社会通念上、同一の事象を指していると評価できる。
結論
1. 被告人の行為は「業務に属する者」によるものとして罰則が適用される。2. 売主の名称に相違があっても公訴事実の同一性が認められるため、原判決に違法はない。
事件番号: 昭和26(あ)511 / 裁判年月日: 昭和27年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧物価統制令等における「営業」の意義に関し、営利の目的をもって有償的譲渡(販売)を反復継続する意思で行う場合には、仕入行為が反復されることは要件とならない。 第1 事案の概要:被告人が、営利の目的をもって有償的譲渡(販売行為)を反復して行った事案。弁護人は、販売行為のみならず仕入行為も反復してなさ…
実務上の射程
主に刑事訴訟法における「公訴事実の同一性」の判断基準として活用できる。特に、被害者や取引相手といった主体の一部に誤りがある場合でも、日時・場所・物等の客観的状況が一致していれば同一性を肯定する有力な根拠となる。また、身分犯や業務関連の罰則規定の解釈において、文言を超えた限定解釈を排する姿勢を示す際にも参照しうる。
事件番号: 昭和24(れ)445 / 裁判年月日: 昭和25年10月6日 / 結論: 棄却
一 水産業を目的とする株式会社の発起人等が、右会社の目的たる業務に必要な資材として、指定生産資材在庫調整規則所定の生産資材を、県から払下げを受け又は現物出資として給付を受けて所有保管していたときは、右発起人等は、同規則第三条にいわゆる「業務に関して」同規則所定の「指定生産資材を所有する者(以下事業者という)」にあたる。…
事件番号: 昭和25(れ)1939 / 裁判年月日: 昭和26年4月13日 / 結論: 棄却
原判決判示第二及び第三の事実によれば、被告人は鮮魚商であつて前後五回に亘り冷凍あじ、さば合計一、七八五貫をA冷凍工業株式会社B工場より買入れた上、前後二一回に亘り冷凍魚の内一、二六八貫を鮮魚小売組合、共同販売所その他小売業者に売渡したものであるから、原判決が、被告人の右業態に徴し、その買入及び売却の所為を以て、卸売業者…
事件番号: 昭和25(あ)723 / 裁判年月日: 昭和25年12月28日 / 結論: 棄却
一 衣料品配給規則第五条違反の罪は、衣料品を所定の割当公文書と引換えないで譲渡する罪であるから、その譲渡行為がある毎に犯罪が成立するものといわなければならない。 二 裁判所構成法による控訴院が、同戦時特例第五条により、上告審として為した判決は、刑訴法第四〇五条第三号にいわゆる判例に当らない。 三 判例違反の主張をするの…
事件番号: 昭和25(あ)1650 / 裁判年月日: 昭和26年3月15日 / 結論: 棄却
論旨は原判決をもつて起訴のない事実につき被告人を有罪としたものと前提して原判決は大審院の判例に反するものというのであるが、論旨には原判決の反すると主張する大審院の判例を具体的に挙示していないのであるから、論旨は刑訴規則第二五三条の規定に違反する不適法の上告申立であるといわなければならない。