一 水産業を目的とする株式会社の発起人等が、右会社の目的たる業務に必要な資材として、指定生産資材在庫調整規則所定の生産資材を、県から払下げを受け又は現物出資として給付を受けて所有保管していたときは、右発起人等は、同規則第三条にいわゆる「業務に関して」同規則所定の「指定生産資材を所有する者(以下事業者という)」にあたる。 二 現にタンクの形体をなして存在する鋼板を売買するにあたり、右タンクの素材中の一部たる薄物鋼板及び骨核等を売主に保留し、別に売主手持の故厚物鋼板若干を加え、結局鋼板合計一二二〇屯を代金屯当り三二〇〇円として売買したときは、右取引の目的物については、故鋼板の販売価格の統制額を適用すべきである。 三 会社のため会社の業務に関し会社所有の泥油一〇〇、〇〇〇立を相手方に交付し、その対価として相手方から軽油三三、四〇〇立(泥油三本に対し軽油一本の割)の交付を受ける契約をしたときは、物価統制令第一三条違反の罪が成立する。
一 指定生産資材在庫調整規則第三条にいわゆる「業務に関して指定生産資材を所有する者」の意義 二 タンクの形体をなすその素材たる鋼板の売買と故鋼板の販売価格の統制額の適用 三 会社の業務に関する物資の交換と物価統制令第一三条違反罪の成立
指定生産資材在庫調整規則3条,物価統制令3条,物価統制令13条,昭和21年3月31日大蔵省告示203号
判旨
物価統制令の適用において、取引の目的物が外形上は加工物(タンク)であっても、当事者の経済的目的がその素材(鋼板)の取得にあり、実質的に素材の売買と認められる場合には、素材の統制額に関する規定が適用される。
問題の所在(論点)
外形上は加工物(タンク)として存在する物件の取引について、当事者がその素材(鋼板)の取得を目的としている場合、物価統制令上の「素材」の統制額規定を適用できるか。また、被告人にその認識が必要か。
規範
取引が物価統制令等の規制対象となるかは、単なる物件の外形のみならず、当事者の経済上の目的、契約の具体的な内容、及び取引の実体(実質)を考慮して判断すべきである。具体的には、外形上は加工物の形態を成していても、当事者の真の目的がその素材の取得にあり、素材の分量や代金が合意されている場合には、その素材に関する統制法規が適用される。
事件番号: 昭和25(れ)1037 / 裁判年月日: 昭和25年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑法等の罰則規定における「業務に属する者」とは、必ずしも業務行為として当該行為を行った者に限られず、売買の主体と利益享受者が別人であっても適用される。また、公訴事実に記載された売主の氏名・名称が認定事実と異なっていても、日時、目的物、価額等の主要な要素が同一であれば、公訴事実の同一性が認められる…
重要事実
被告人会社の発起人等は、タンク2基の売買契約を締結した。しかし、買主の経済的目的はタンクとしての使用ではなく、素材である鋼板の取得にあり、売主もその意図を了承していた。契約では、タンクの一部(薄物鋼材等)を除外する一方、別途手持ちの厚物鋼板を付加し、最終的に鋼板合計1,220トンを単価ベースで計算した代金で取引した。被告人らは、これが「鋼板」の売買ではなく「タンク」の売買であるとして、鋼板の統制額違反を否定した。
あてはめ
本件取引は、解体前のタンクという形態での取引であるため、一応は「タンク」の取引といえる。しかし、買主の目的は鋼板の取得にあり、契約内容も一部素材の除外や別素材の付加を伴うもので、合計重量に応じた代金が設定されていた。このような事実に照らせば、本件取引の真の目的はタンクの素材を成す鋼板にあるといえる。したがって、実質的な経済的実体に着目し、鋼板の統制額規定を適用するのが正当である。また、被告人らにおいて、右取引の経済的実体(鋼板の売買であること)についての認識があれば、私法上の法的性質(混合契約か等)への明確な認識が欠けていても、罪責を免れない。
結論
取引の真の目的が素材の取得にある以上、実体に基づき素材の統制額規定が適用される。被告人らが取引の実体を認識していた以上、物価統制令違反が成立する。
実務上の射程
行政法規(特に経済統制法規)の解釈において、私法上の形式的な契約名目にとらわれず、当事者の経済的目的や取引の実体(実質)を重視して規制の適否を判断する「実質主義」の考え方を示す。答案上は、脱法的な取引や形式を仮装した取引における構成要件該当性を検討する際の規範として利用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1311 / 裁判年月日: 昭和26年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令9条の2にいう「不当に高価なる額」とは、同種又は類似物資の統制価格を参酌し、社会経済秩序維持の観点から適正と認められる価格を標準として判断すべきである。本件のように卸売に類する業態の場合、卸売業者販売価格の統制額を基準とすることは正当である。 第1 事案の概要:被告人が綿織物天竺を販売し…
事件番号: 昭和26(れ)1092 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する上告趣意であっても、その実質が単なる量刑不当の主張に帰する場合には、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人側が憲法違反を理由として上告を申し立てた事案。しかし、その主張内容を精査したところ、実質的には量刑が重すぎるという不服申し立てにすぎないものであった。 第2…
事件番号: 昭和26(れ)674 / 裁判年月日: 昭和26年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、被告人の上告趣意について刑事訴訟法405条の事由に該当しないとし、かつ同法411条を適用して原判決を破棄すべき著しい正義に反する事由も認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てた事案であるが、具体的な公訴事実の内容や下級審の判断、被告人が主張…
事件番号: 昭和25(れ)1180 / 裁判年月日: 昭和25年11月10日 / 結論: 棄却
所論ゴム製品については、その統制額を指定した物価庁告示が既に廃止せられたことは所論のとおりであるけれども、右告示による統制指定の廃止は、本件のごとくその廃止以前に犯された物価統制令第三条違反の罪に対しては、旧刑訴第三六三所定の「犯罪後ノ法令ニ因リ刑ノ廃止アリタトキ」に該らないとすることは、当裁判所判例(昭和二三年(れ)…