所論ゴム製品については、その統制額を指定した物価庁告示が既に廃止せられたことは所論のとおりであるけれども、右告示による統制指定の廃止は、本件のごとくその廃止以前に犯された物価統制令第三条違反の罪に対しては、旧刑訴第三六三所定の「犯罪後ノ法令ニ因リ刑ノ廃止アリタトキ」に該らないとすることは、当裁判所判例(昭和二三年(れ)第八〇〇号、同二五年一〇月一一日大法廷判決)の示すところである。従つて論旨は理由がない。
ゴム製品の統制額に関する告示の廃止と旧刑訴法第三六三条にいわゆる「刑ノ廃止」
昭和24年12月5日物価庁告示979号,旧刑訴法363条2号
判旨
憲法25条1項の規定は、国が国民一般に対し概括的に健康で文化的な最低限度の生活を営ませる国政上の任務を有することを宣示したにとどまり、個々の国民に対し、国家に対して直接に具体的・現実的な権利を保障するものではない。
問題の所在(論点)
1. 犯罪後の告示の廃止が、刑訴法(旧法)上の「刑の廃止」にあたるか。 2. 憲法25条1項に基づき、国民が国家に対して具体的・現実的な権利を直接請求し、物価統制の効力を否定できるか。
規範
憲法25条1項の法意は、国家が国民一般に対して概括的に健康で文化的な最低限度の生活を営ませるべき「国政上の任務」を負うことを宣示したものである。したがって、同条項の規定のみを根拠として、個々の国民が国家に対して直接に具体的・現実的な権利を有することを保障するものではない。
重要事実
被告会社および被告人は、ゴム製品の統制額を指定した物価庁告示に基づく物価統制令3条違反の罪に問われた。これに対し被告人側は、犯罪後に当該物価庁告示が廃止されたことによる刑の廃止、および憲法25条に基づき統制額指定の効力や罪責を争い、上告した。
あてはめ
憲法25条1項の趣旨は、国政の指針として国民の生活向上を図る義務を課したものである。本件において被告人側は、同条項を根拠に物価統制の違憲性や罪責の免除を主張するが、同条は具体的権利を直接付与するものではない。したがって、統制額指定の効力を争う論拠として同条を用いることはできない。また、告示の廃止は単なる事情の変更であり、刑そのものの廃止には該当しないとする判例(最大判昭25.10.11等)に照らし、本件の罪責は維持される。
結論
被告人の上告を棄却する。憲法25条1項は具体的権利を保障したものではないため、これを根拠に物価統制違反の罪責を免れることはできない。
実務上の射程
生存権の法的性格について、プログラム規定説を採る初期の重要判例である。憲法25条に基づく具体的権利の発生には法律の具体化が必要であるとする文脈(朝日訴訟や堀木訴訟の射程)で引用される。答案上は、生存権の具体的権利性の否定、または立法府の裁量を論じる際の前置きとして活用される。
事件番号: 昭和25(あ)2857 / 裁判年月日: 昭和26年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が実刑を科せられたことによりその家族が生活困難に陥るとしても、その刑を言い渡した判決が憲法25条に違反することはない。 第1 事案の概要:被告人が犯した罪に対し、裁判所が制裁として実刑を科した。これに対し弁護人は、実刑によって被告人の家族が生活困難に陥ることは、憲法25条が保障する生存権の趣…