判旨
詐欺罪における犯行の動機や背景事情に関する事実は、犯罪の成否に直接影響する構成要件的要素ではない。したがって、共犯者や仲介者との間の契約関係の詳細に齟齬があったとしても、欺罔行為及び不法領得の意思が認められる限り、詐欺罪の成否を左右しない。
問題の所在(論点)
詐欺罪の成立において、犯行の動機や背景となった第三者との契約関係の成否が、犯罪の成否に影響を及ぼすか。
規範
詐欺罪の成否は、欺罔行為、錯誤、処分行為、及び財物の移転という一連の構成要件該当性によって判断される。犯行に至る動機や背景事情、あるいは第三者との内部的な契約関係の成否は、それ自体が詐欺罪の構成要件を画するものではないため、これらに関する事実認定に多少の相違があっても、犯罪の成立自体には影響を及ぼさない。
重要事実
被告人は、知人であるA及びBらから、長野市に林檎を買い入れに来ているCのために仲介を行うよう勧められた。被告人はこれに応じ、Dとの間で林檎の取引(判示取引)を行ったが、実際には詐欺の意思を有していた。被告人側は、原審が認定したA、B、Cとの間の契約関係等の事実認定が証拠に基づかない虚偽のものであると主張し、事実誤認および理由不備を理由に上告した。
あてはめ
本件において、被告人がA、B、Cとの関係に基づき、Dに対して林檎の買入仲介を装って取引を行った事実は、本件詐欺の「動機」として認定されているに過ぎない。詐欺罪の核心は、被告人がDを欺いて財物を領得した点にあり、その背景にあるAらとの具体的な契約関係がどのようなものであったかは、詐欺罪の構成要件の充足を左右する本質的な事項ではない。したがって、仮に動機部分の認定に所論のような点があったとしても、詐欺罪の成立を否定する理由にはならない。
結論
被告人と第三者との間の契約関係の如何は、本件詐欺罪の成否に影響しないため、原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
詐欺罪における「欺罔の対象」が何であるかを特定する際に有用である。本判決は、主観的な動機に関連する付随的事実が、構成要件該当性の判断において相対的に重要度が低いことを示唆している。答案上は、動機に関する事実誤認の主張に対し、本質的な構成要件(欺罔行為の有無等)に影響しないことを論証する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)795 / 裁判年月日: 昭和26年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同正犯の成立において、犯行に加わった動機は単なる主観的事情に過ぎず、共同正犯としての刑事責任を阻却する事由とはならない。 第1 事案の概要:被告人は、本件犯行に共同正犯として関与したが、その犯行に至る特定の動機(詳細は判決文からは不明)が存在することを理由に、共同正犯としての責任を免れるべきであ…