判旨
犯罪の成立後に生じた事後の契約成立等の事情は、既に成立した犯罪の罪責を左右するものではない。
問題の所在(論点)
犯罪の実行および既遂の後に生じた契約成立等の事情が、既に成立した犯罪の成否や被告人の罪責に影響を及ぼすか。
規範
犯罪の成否およびその罪責については、実行行為の時点およびその直後の結果発生時点の事情に基づいて判断される。犯罪が一度既遂に達した以上、その後に生じた契約の成立や原状回復等の事後の事情は、犯罪の成立そのものや被告人の刑事責任の有無を遡って打ち消すものではない。
重要事実
被告人が特定の犯罪(詳細な罪名は判決文からは不明)に問われた事案において、弁護人は「第二次鋳鉄管に関する契約が成立した」ことを理由に無罪または罪責の軽減を主張した。しかし、当該契約の成立は、犯罪が成立したとされる時点よりも後の出来事であった。
あてはめ
本件における第二次鋳鉄管に関する契約の成立は、本件犯罪が成立した後の事情に属するものである。一度犯罪が成立した以上、その後の契約成立は事後的な情状に過ぎず、既遂に達した犯罪の成否そのものを左右する法的根拠とはなり得ない。したがって、当該事情をもって被告人の罪責を否定することはできない。
結論
本件犯罪成立後の事情は被告人の罪責を左右しないため、上告を棄却し、有罪とした原判決を維持する。
実務上の射程
主に財産犯(詐欺、横領、背任等)において、被害回復や事後の契約締結による正当化を主張する弁護側への反論として機能する。犯罪成立の「時点」を固定し、事後の事情は量刑上の考慮要素にとどまることを示す論理として有用である。
事件番号: 昭和27(あ)4821 / 裁判年月日: 昭和28年11月17日 / 結論: 棄却
所論は累犯にならない前科を量刑の資料としたことは、憲法一四条の法の下における国民平等の原則に反すると主張するのであるが原判決説示のとおり、詐欺罪の量刑に当り犯行の動機、罪質、態様、回数、騙取した金員の額並びに物品の種類数量その他記録に現われた諸般の情状のほか殊に前科の点を考量の資料とすることはむしろ当然でありまたこれを…