判旨
未遂罪における刑の減軽(刑法43条本文)をするか否かは、裁判所の広範な裁量に委ねられており、減軽しなかったとしても直ちに違法とはならない。
問題の所在(論点)
未遂減軽(刑法43条本文)の規定は任意的なものであるか、また、裁判所が減軽を行わないことが裁量の逸脱・濫用として違法となるか。
規範
刑法43条本文(未遂減軽)の適用は任意的であり、犯行の態様、結果の重大性、未遂に終わった事情等の諸般の事情を総合的に考慮し、刑を減軽するか否かを決定することは裁判所の裁量権の範囲に属する。
重要事実
被告人は、被害者の頭部をめがけて斧を打ち下ろし、さらに起き上がってきた被害者の頭部を狙って再度斧を打ち下ろした(二度目は外れて肩に当たり柄が折れた)。被害者の負傷の程度は、前頭部左側の裂創および左肩の擦過傷であり、約3週間で完治するものであった。原審は被告人が犯行当時、心神耗弱の状態にあったことを認めて刑法39条2項・68条2号による必要的減軽を行ったが、未遂による減軽(43条本文)は行わなかった。
あてはめ
本件において、被告人は殺意をもって斧で頭部を狙うという危険性の高い行為に及んでいる。結果として被害者の負傷は全治3週間程度にとどまっているが、原審が心神耗弱による必要的減軽を適用した上で、さらに未遂による減軽を重ねて行うかどうかを検討し、これを行わないと判断したことは、裁判所の合理的な裁量の範囲内にあると解される。
結論
未遂による減軽を行うか否かは裁判所の裁量に属する事項である。したがって、原審が未遂減軽をしなかったことに違法はなく、上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
任意的減軽規定全般に共通する法理であり、答案上、未遂犯の刑責を論じる際に「刑法43条本文により刑を減軽することができる」と記述する根拠となる。裁判所が減軽を選択しなかったことの妥当性を争うことは、事実上の裁量権の逸脱を指摘しない限り、法律上の理由としては認められにくいことを示している。
事件番号: 昭和26(あ)4480 / 裁判年月日: 昭和28年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】現行の死刑制度は憲法に違反するものではなく、過去の大法廷判決の趣旨に照らして合憲である。 第1 事案の概要:被告人は強盗殺人等の罪に問われ、第一審において死刑を言い渡された。被告人側は、死刑制度自体が憲法に違反するものであると主張し、また量刑の不当や事実誤認、自白の任意性欠如などを理由に上告した。…