判旨
被告人の精神状態等に関する鑑定の実施は、事実審裁判所が諸般の事情を考慮してその必要性を決すべき自由裁量に属する事項である。原審が鑑定を行わなかったとしても、直ちに違法とは認められない。
問題の所在(論点)
裁判所が被告人の精神状態について鑑定を実施するか否かを決定する際、どのような裁量が認められるか。
規範
被告人の精神状態その他について鑑定を実施するか否かは、事実審裁判所が諸般の事情を考慮してその必要性の有無を決定すべき自由裁量の問題である。
重要事実
被告人の弁護人は、被告人の精神状態等について鑑定を行うべきであると主張したが、原審はその鑑定を行わずに審理を終結させた。これに対し、被告人側は原審の審理に不尽があるとして上告した。
あてはめ
本件において、原審は諸般の事情を考慮した結果、精神状態の鑑定を必要としないと判断した。このような判断は裁判所に委ねられた自由裁量の範囲内のものであり、鑑定を実施しなかった事実に違法性は認められない。また、その他の証拠の採否についても原審の合理的な裁量に基づくものであり、審理不尽の違法はないと解される。
結論
鑑定実施の要否は裁判所の自由裁量に属するため、原審が鑑定を行わなかったとしても違法とはいえず、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟における証拠調べ(鑑定)の必要性の判断に関し、裁判所に広範な裁量を認めるものである。実務上、精神障害の疑いがある場合でも、裁判所が外部的な言動等から責任能力の存在を確信できる場合には、鑑定を却下し得ることの根拠として機能する。
事件番号: 昭和26(れ)445 / 裁判年月日: 昭和26年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事手続における証拠調べの範囲の決定は、事実審の合理的な自由裁量に委ねられており、被告人の精神状態に関する再鑑定や鑑定人の尋問申請を却下したとしても、直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人の精神状態が問題となった事案において、原審は既に提出されていた第一審公判廷での被告人の供述および鑑…