原判決は、その判示のごときAが原審相被告人Bに無断で同人の住所及び氏名を冐用し、禁制品である手巻タバコを小包郵便で他に発送したという不都合な所為につき、被告人が原審共同被告人Bと共謀し、右Aを恐喝して右の事情を内密に済ませるという名義の下にAから金員を喝取することを企て、判示のごとき恐喝行為をしたという事実を認定したものであることは原判文上明瞭であつて所論のように、被告人が所論権利実行の手段として右のごとき恐喝をしたことは原審の認定しないところであり、また、被告人も原審において、右のごとき事実関係を主張した形迹はみとめられないのである所論は理由がない。
権利実行の手段としての恐喝にあたらない事例
刑法249条1項,刑法60条,旧刑訴法409条
判旨
権利行使の手段として恐喝行為が行われた場合であっても、それが他人の不都合な所為を内密に済ませる名義で金員を喝取する企図に基づくものであれば、恐喝罪の成立を妨げない。
問題の所在(論点)
権利の実行として行われる金員喝取行為について、恐喝罪が成立するか。特に、不都合な事実を秘匿する代償として金銭を要求する行為の違法性が問題となる。
規範
権利行使の手段として行われる脅迫・強迫であっても、それが権利の範囲を逸脱し、社会通念上容認される限度を超える方法による場合は、恐喝罪(刑法249条)における「脅迫」に該当し、不法領得の意思も認められる。
重要事実
被告人は、共同被告人Bと共謀し、被害者Aに不都合な所為があることに乗じ、その事情を「内密に済ませる」という名義の下、Aを恐喝して金員を喝取することを企てた。被告人は、判示のような恐喝行為を用いて実際に金員を交付させたが、弁護人はこれが権利実行の手段である旨を主張して上告した。
あてはめ
原判決の認定によれば、被告人の行為は単なる権利の行使ではなく、被害者の弱みに付け込み、それを口外しないことの対価として金員を喝取しようとする確定的な企図に基づいている。このような態様による金員の要求は、たとえ背後に何らかの債権等の権利が存在し得るとしても、手段の相当性を著しく欠くものであり、社会通念上容認される権利行使の範囲を逸脱しているといえる。
結論
被告人の行為は恐喝罪を構成する。権利実行の手段として行われたとの主張は、原審の認定しない事実に基づくものであり、採用できない。
実務上の射程
権利行使と恐喝の限界に関するリーディングケース。答案では、権利の存在という「目的」が正当であっても、不都合な事実の暴露を背景とした「手段」が社会通念上許容されない場合には、違法性が阻却されず恐喝罪が成立すると論ずる際に活用する。
事件番号: 昭和41(あ)2301 / 裁判年月日: 昭和42年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】正当な権利行使の手段として行われた恐喝行為であっても、その手段方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を逸脱する場合には、恐喝罪が成立する。 第1 事案の概要:上告人は正当な権利(債権等)を有していたが、その行使に際して恐喝罪の構成要件に該当する行為を行った。弁護人は権利行使である以上…