判旨
権利行使を仮装したとしても、実態として正当な権利行使の意図がなく、第三者のための逃亡資金調達等の目的で脅迫を用いて金員を交付させた場合は、恐喝罪を構成する。
問題の所在(論点)
正当な権利行使を装いつつ、実態は他人の逃亡資金調達等の目的で脅迫を用いて金員を交付させた場合に、恐喝罪が成立するか。
規範
刑法249条1項の恐喝罪の成否に関し、権利行使の体裁を採っていても、客観的に権利行使の事実が認められず、かつ主観的にも権利行使の意図がない場合には、違法性が阻却される余地はなく恐喝罪が成立する。
重要事実
被告人は、Aに対し30万円の支払を請求できる正当な貸金債権をBから譲り受け、その債権行使として5000円の交付を受けた、あるいは権利行使の意図があったと主張した。しかし実際は、B及びCの依頼を受け、彼らの逃亡資金を調達する目的で、特殊な関係にあるAに対し出金を要求し、脅迫を用いて金員を交付させたものであった。
あてはめ
被告人が主張する「債権譲渡を受けた正当な権利の行使」という事実は認められず、その主観的な意図も認められない。認定事実によれば、被告人の行為の本質は第三者のための逃亡資金調達という不法な目的にあり、この目的のためにAを脅かして金員を喝取したものである。したがって、権利行使としての正当な業務の範囲を逸脱しており、恐喝罪の構成要件を充足する。
結論
被告人の行為は刑法249条1項の恐喝罪を構成する。被告人の上告を棄却する。
実務上の射程
権利行使と恐喝の限界に関する判例である。権利の存在や行使の意図が否定される事案では、手段の相当性を検討するまでもなく恐喝罪が成立することを確認する際に引用できる。実務上は、権利行使を口実とした不当な利益追求を排斥する基準として機能する。
事件番号: 昭和26(れ)77 / 裁判年月日: 昭和26年6月1日 / 結論: 破棄差戻
被告人が甲に対し弁償金を要求する権利を有していたか否か、又有していたとしても被告人の行為が該権利を行使する意志に出たものでしかもその権利行使の範囲内に属するものであるか、或は単に権利行使に藉口し若しくはこれに仮託したものであるかの点を明確にしないで、「被告人は甲がその約束を果さなかつたところから弁償金として金一万円を請…