一 原判決は、被告人らが共謀の上「先に賭博に負けた金銭を取返へす為相手を脅迫して之を喝取しようと考え」原判示のようにABらに暴行脅迫を加えて同人らを畏怖させて金員を喝取した事実を認定したのであつて、所論のように被告人らが権利実行の手段として脅迫行為を行つたことを認定したものでないこと判文上明らかである。そして論旨引用の大審院判決は権利実行に仮托して恐喝を行つた場合の判決であつて原判決は所論のように右判例と相反する判断をしたものではない。 二 論旨引用の当裁判所第一小法廷判決は、事実の認識について、全く反対の趣旨の供述を引いてその認識があつたような認定をしたのを違法であるとしたものであつて、本件のように所論の証拠が被告人らが恐喝の現場に居つたことの証明になる場合に適切ではない。 三 原判決に証拠の標目として掲げられた証拠の中、判示にそわない部分は、原新が証拠としなかつたものと解することができる。 四 原判決が所論(一)の超過買受行為と所論(二)の所持とが手段結果の関係にあるものとして刑法五四条一項後段を適用したことを非難し、価格等統制令に違反して買受けた物資を同令に違反して売渡した場合が連続犯であつて牽連犯ではないとして大審院判例に違反するというのであるが、右(一)と(二)の各所為を手段結果の関係にあるものとして刑法五四条一項後段を適用した原判決が論旨引用の大審院判決に違反するとの主張は、連続犯の規定が廃止されてその適用が排除された以後の本件については不利益な主張であるばかりでなく、判例違反として適切な主張ではない。
一 賭博に負けた金銭を取返へす為相手を脅迫して之を恐喝したと認定した場合と、権利行使に仮托してした恐喝に関する判例違反の有無 二 実権則違反に関する判例を引用しても原審の事実認定を非難するに過ぎない事例 三 証拠の標目として掲げられた証拠中判示にそわない部分と採証の範囲 四 生糸の超過買受行為と、その所持とを牽連犯とした判決と判例違反の主張
刑法249条,刑法57条1項後段,刑法(昭和22年法律124号による改正前のもの)55条,新刑訴法405条,新刑訴法訴法411条,旧刑訴法336条,旧刑訴法337条,旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則8条,物価統制令3条,物価統制令13条の2
判旨
賭博で失った金銭を取り戻す目的であっても、相手方を脅迫して畏怖させ金員を喝取する行為は、権利実行の手段として行われたものでない限り、恐喝罪(刑法249条)を構成する。
問題の所在(論点)
賭博により失った金銭を取り戻す目的で暴行・脅迫を用いて金員を回収する行為について、恐喝罪(刑法249条1項)が成立するか。権利行使の意思の有無が問題となる。
規範
権利行使の手段として行われる暴行・脅迫であっても、それが権利の範囲内であり、かつその方法が社会通念上相当と認められる限度を超えている場合には、恐喝罪が成立し得る。ただし、当初から相手方を畏怖させて金員を喝取することを目的としている場合には、正当な権利行使の仮託にすぎず、当然に恐喝罪の構成要件を充足する。
重要事実
被告人らは共謀の上、先に賭博で負けた金銭を取り戻すため、相手方を脅迫して金銭を喝取しようと計画した。被告人らは被害者らに対して暴行および脅迫を加え、相手方を畏怖させて金員を喝取した。弁護人は、本件行為が「権利実行」の手段として行われたものであると主張した。
あてはめ
被告人らは「先に賭博に負けた金銭を取り戻すため、相手を脅迫してこれを喝取しよう」と考えて行動している。これは単なる権利の実行ではなく、相手方を畏怖させて金員を喝取することを直接の目的としたものである。したがって、権利実行に仮託して恐喝を行ったものといえ、暴行・脅迫によって被害者を畏怖させ、金員を交付させた行為は、恐喝罪の構成要件に該当すると評価される。
結論
被告人らの行為は恐喝罪を構成し、原判決の有罪認定は妥当である(上告棄却)。
実務上の射程
自力救済の限界に関する事案であるが、本判決は「権利実行の仮託」がある場合に恐喝罪の成立を肯定している。答案上は、債権回収目的の暴行・脅迫が、客観的範囲(金額の正当性)および手段の相当性(社会通念上の許容範囲)を逸脱している場合に恐喝罪が成立するという論理の中で、主観的にも最初から喝取目的があったことを強調する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)119 / 裁判年月日: 昭和26年5月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利行使を仮装したとしても、実態として正当な権利行使の意図がなく、第三者のための逃亡資金調達等の目的で脅迫を用いて金員を交付させた場合は、恐喝罪を構成する。 第1 事案の概要:被告人は、Aに対し30万円の支払を請求できる正当な貸金債権をBから譲り受け、その債権行使として5000円の交付を受けた、あ…