一 被告人および弁護人に対し証人訊問の日時、場所を通知して立会の機会を与え、その証人審問権を実質的に害しない措置を講ずれば憲法第三七条第二項の規定に対する違反を生じないことは、当裁判所の判例とするところである(昭和二四年(れ)第一八七三号同二五年三月一五日大法廷判決、尚昭和二四年(れ)第三三六号同二五年九月五日第三小法廷判決参照)。 二 被告人並びに弁護人に対し証人訊問の日時、場所を通知して立会の機会を与え、その証人審問権を実質的に害しない措置を講じた以上、被告人並びに弁護人において現実に反対訊問をしなかつたとしても、公判廷外におけるその証人の供述録取書類をもつて証人に代えることは何ら所論憲法第三七条、刑訴応急措置法第一二条に違反するものではない(昭和二三年(れ)第一六七号同年七月一九日当裁判所大法廷判決参照)。
一 被告人に証人訊問の機会を与えることと憲法第三七条第二項 二 公判廷外における証人の供述記録書類をもつて証人に代えることの合憲性
憲法37条2項,刑訴応急措置法12条1項
判旨
証人申請の採否は裁判所の裁量に委ねられ、また被告人側に証人訊問の機会が適法に告知されながらこれを行使しなかった場合には、審問権の侵害とはならない。さらに、公判廷における自白は補強証拠を要せず、自白と他の証拠を総合して犯罪事実を認定することは憲法上許容される。
問題の所在(論点)
1. 裁判所による証人採用の裁量の限界。2. 被告人側が欠席した状況での証人訊問調書の証拠能力と証人審問権の関係。3. 公判廷における自白の補強証拠の要否および自白と他証拠による事実認定の可否。
規範
1. 憲法37条2項の証人訊問権は、不必要な証人まで悉く訊問することを義務付けるものではなく、証人申請の採否は実験則に反しない限り裁判所の裁量に委ねられる。2. 被告人・弁護人に証人訊問の日時・場所を通知して立会の機会を与え、証人審問権を実質的に害しない措置を講じた以上、現実に反対訊問を行わなくても、公判外の供述録取書類を証拠とすることは同条に違反しない。3. 公判廷における被告人の自白は憲法38条3項の「本人の自白」に該当せず、自白と他の証拠を総合して犯罪事実を認定することは適法である。
重要事実
被告人が強盗等の罪で起訴された事案。原審は、弁護人が申請した証人Aの訊問を却下し、また証人Bの受領判事による訊問期日を被告人・弁護人に適法に告知したが、両者は出頭しなかった。弁護人は他事件との重複を理由に期日変更を申請したが、疎明資料がなかったため却下された。原審は被告人の公判廷での自白と、証人Bの訊問調書等を総合して犯罪事実を認定し、有罪としたため、被告人側が証人審問権の侵害および自白のみによる処罰の禁止(憲法37条2項、38条3項)を理由に上告した。
あてはめ
1. 本件の具体的性質や環境を斟酌すれば、証人Aの訊問は裁判に必要不可欠とは認められず、申請却下は実験則に反しない。2. 証人Bの訊問については、期日・場所が適法に告知されながら、被告人らが自ら権利を行使しなかったものである。弁護人の期日変更申請も疎明がなく、正当な理由がないとされた以上、審問の機会は実質的に保障されていたといえる。3. 公判廷の自白は憲法38条3項の自白に含まれない上、原審は自白だけでなく証人Bの供述記載等も総合して認定しており、自白のみによる認定にはあたらない。
結論
原判決に憲法37条2項および38条3項違反の違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
証人申請の裁量権や、告知による審問権保障の代替可能性を示す基準として重要である。また、公判廷自白が補強証拠を不要とする点は、現行刑訴法319条2項の下でも、公判廷の自白が「本人の自白」に含まれる(通説・判例)ため、実務上は自白以外の証拠の有無を慎重に検討する際の前提知識となる。
事件番号: 昭和25(れ)1365 / 裁判年月日: 昭和25年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が特定の被告人のために申請された証人を取り調べる際、当該被告人の弁護人に反対尋問の機会を与えていれば、証言内容に関係のない他の被告人の弁護人に尋問の機会を与えなかったとしても憲法37条には違反しない。また、証拠調べ後の意見陳述の機会を被告人のみに与え、弁護人に与えなかったとしても適法である。…