判旨
強盗の目的で番人を脅迫したが、番人が非常ベルを鳴らして抵抗したために逃走した場合、自己の意思により犯罪を中止したとはいえず、刑法43条但書の中止未遂にはあたらない。
問題の所在(論点)
強盗に着手した犯人が、被害者の抵抗や非常ベルの鳴動を受けて逃走した場合、刑法43条但書の「自己の意思により犯罪を中止した」といえるか(中止未遂の成否)。
規範
刑法43条但書の中止未遂が認められるためには、犯人が「自己の意思により」犯罪を中止したことが必要である。これは、悔悟等の主観的な理由に基づき、自発的に実行を中止したことを要し、外部的障壁や予期せぬ事態によって犯罪の完遂が客観的に困難となったために断念した場合は、いわゆる障礙未遂に該当する。
重要事実
被告人は他3名と共謀し、工場の倉庫から原料を強奪しようと計画した。被告人らは夜番室に侵入し、日本刀で夜警番人を脅迫したが、その際、番人が既に非常ベルを鳴らした上で被告人らに対して抵抗してきた。そのため、被告人らは目的を遂げず、その場から逃走した。
あてはめ
本件において、被告人らが犯行を断念したのは、番人が非常ベルを鳴らしたこと、およびその後の番人による抵抗という外部的な障害が発生したことによるものである。このような状況下での逃走は、内心の悔悟に基づく自発的な中止とは認められず、外部的事態によって犯行の継続を断念せざるを得なかったものと評価される。したがって、中止の任意性は認められない。
結論
被告人の行為は中止未遂ではなく障礙未遂にあたる。したがって、刑の必要的減免を定めた刑法43条但書の適用は認められない。
実務上の射程
中止未遂における「自己の意思により」の解釈(任意性)について、外部的障害の有無を重視する基準を示している。答案上は、本判例を参考に、ベルの鳴動や被害者の抵抗といった客観的事実が、行為者の心理にどのような影響を与えたか(「やろうと思えばできたが、やめた」のか、「やろうとしたが、できなかった」のか)を分析する際の指標として用いる。
事件番号: 昭和26(れ)1087 / 裁判年月日: 昭和26年9月18日 / 結論: 棄却
論旨摘録にかかる原審公判廷における被告にAの供述によれば同人が犯行の半ばB方を逃げだしたのは、Bの女房に騒がれたためか、B本人が抵抗したためか、或は同人が抵抗しなくなつたことから被告人が恐ろしくなつたためであるか、何れとも認め得られるのであるが、いずれにしても本件の場合が障碍未遂であつて中止未遂でないことは疑ない。そし…
事件番号: 昭和23(れ)1425 / 裁判年月日: 昭和24年2月8日 / 結論: 棄却
被告人の控訴申立が理由あるものであつたことは所論のとおりである、而して此場合控訴申立後の未決勾留日數は舊刑訴第五五六條の規定に依り刑の執行の際當然本刑に通算されないものであつて、原審が判決で之が通算を言渡すべきものではない。
事件番号: 昭和23(れ)671 / 裁判年月日: 昭和23年10月21日 / 結論: 棄却
一 巡査が強盗しようと企てて拳銃を携行したときは、それが巡査の執務時間中であつても、銃砲等所持禁止令第一条但書の職務のため所持する場合にあたらない。 二 午後七時過頃に婆さん(當五八年)と娘(當二六年)だけの住家に成年男子三人も侵入して婆さんの口元を手で押えようとしたらそれは被害者の反抗を抑壓する暴行であると認定しても…