労働安全衛生規則第一二四条は、労働基準法第四二条に定められている使用者が機械、器具その他の設備による危害を防止するために講じなければならない必要な措置の具体的内容を明らかにするために同法第四五条の委任により定められた命令であつて、同法第四六条第三項の委任による命令ではないこと所論のとおりである。従つて、規則第一二四条に違反した被告人の行為は、法第四二条に違反したものであつて法第四六条に違反したものではない。
労働安全衛生規則第一二四条は労働基準法第四五条の委任命令である
労働基準法42条,労働基準法46条,労働基準法45条,労働安全衛生規則124条
判旨
労働基準法上の措置義務違反における責任帰属について、会社機構上の上役であっても、現場を巡回し工場長等と共に実質的な監督・指揮を行っている場合には、自らも「行為者」として処罰の対象となる。
問題の所在(論点)
労働基準法上の安全措置義務違反について、直接の現場責任者(工場長)が存在する場合に、その上役である被告人が同法上の「行為者」として刑事責任を負うか。
規範
労働基準法(および労働安全衛生関係法令)における違反行為の責任主体は、単に形式的な役職や会社機構上の地位によって決まるのではなく、当該業務に関し実質的な指揮監督権限を行使し、違反行為に直接関与した「行為者」であるか否かによって判断される。
重要事実
被告人は小規模な会社の代表者等の地位にあり、会社機構上は工場長の上役に当たった。当該工場において労働安全衛生規則124条(現行の安衛法関連規定に相当)に違反する設備の不備があり、事故が発生した。被告人は、工場長や現場監督に任せきりにせず、自らも現場を巡回して監督業務を兼ねていた。
あてはめ
本件会社は小規模であり、被告人は単なる上役としての地位にとどまらず、自ら現場を見回り、工場長や現場監督と共に現場の監督業務を実質的に遂行していた。このような実態に照らせば、被告人は工場長らと共に本件違反行為を自ら行った「行為者」であると認められる。したがって、工場長以外の被告人についても、業務上の過失責任および法令違反の責任を問うことができる。
結論
被告人は現場監督を兼ねる実質的な行為者として、労働基準法違反等の罪責を負う。原判決に法令適用の誤り(条文選択の不備)があったとしても、法定刑が同一である以上、判決に影響を及ぼさないため上告は棄却される。
実務上の射程
行政刑法における「行為者」の認定に関する射程を持つ。形式的な職務分掌にかかわらず、実質的な指揮監督実態があれば上位役職者も処罰され得ることを示しており、中小企業やオーナー企業における責任追及の場面で活用される判例である。
事件番号: 昭和42(あ)187 / 裁判年月日: 昭和42年7月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働基準法121条1項(現在の121条)の適用において、法人の代表者等による違反行為があった場合、当該事業を実質的に経営する主体が同条の「事業主」に当たるとされる。原審が認定した事実関係の下では、被告人を同条の事業主と認めた判断は正当である。 第1 事案の概要:被告人が労働基準法違反の罪で問われた…
事件番号: 平成26(あ)747 / 裁判年月日: 平成28年7月12日 / 結論: 棄却
花火大会が実施された公園と最寄り駅とを結ぶ歩道橋で多数の参集者が折り重なって転倒して死傷者が発生した事故について,警備計画策定の第一次的責任者ないし現地警備本部の指揮官という立場にあった警察署地域官と,同署副署長ないし署警備本部の警備副本部長として同署署長を補佐する立場にあった被告人とでは,分担する役割や事故発生の防止…