労働基準法四二条、四五条、昭和四五年労働省令第二一号による改正前の労働安全衛生規則六三条一項により使用者が講項ずべき危害防止措置の対象たる動力伝導装置等は、当該労働者が作業上接触する危険があるかぎり、その労働者の使用者が所有または管理するものにかぎられるものではなく、また、その労働者をして作業場において直接これを取り扱わせるものであると否とを問わない。
労働基準法四二条により使用者が危害防止の措置を講ずべき機械、器具等の範囲
労働基準法10条,労働基準法42条,労働基準法45条,労働基準法119条1号,労働安全衛生規則(昭和45年労働省令21号による改正前のもの)63条1項
判旨
労働基準法および労働安全衛生規則に基づき使用者が講ずべき危害防止措置の対象は、労働者が作業上接触する危険がある限り、使用者の所有・管理下にあるものや直接取り扱わせるものに限定されない。
問題の所在(論点)
労働基準法上の危害防止措置義務の対象となる「動力伝導装置等」の範囲について、使用者の所有・管理するものや、労働者に直接取り扱わせるものに限定されるか。
規範
労働基準法(旧42条、45条等)および労働安全衛生規則に基づき、使用者が労働者の危害を防止するために講ずべき措置の対象となる装置等は、当該労働者が作業上接触する危険がある限り、当該使用者が所有または管理するものに限定されず、また、労働者に直接これを取り扱わせるものであるか否かも問わない。
重要事実
被告人(使用者)の労働者が、作業場において動力伝導装置等により負傷した事案において、当該装置が被告人の所有・管理に係るものではないこと、および労働者に直接その装置を取り扱わせていたわけではないことを理由に、使用者としての危害防止措置義務(労働基準法違反等)の成否が争われた。
あてはめ
本件における動力伝導装置等は、労働者がその作業に従事する際、物理的に接触して危害を被る客観的な危険性が認められる。そうであれば、たとえ使用者が当該装置を所有・管理しておらず、また労働者に直接その操作を命じていなかったとしても、労働者の安全を確保すべき立場にある使用者には、法令に基づく危害防止措置を講ずる義務が課せられると解するのが相当である。
結論
危害防止措置義務の対象は、所有関係や直接取扱いの有無を問わず、労働者が作業上接触する危険がある全ての装置に及ぶ。
実務上の射程
労働安全衛生法(旧労基法から分離)上の事業者責任を検討する際の重要判例である。請負関係等で他社の設備を利用して作業を行う場合や、通路横の機械など直接の作業対象外の設備についても、接触の危険がある限り事業者は安全措置を講じる義務を負うという実務上の広範な責任を示している。
事件番号: 昭和46(あ)1769 / 裁判年月日: 昭和47年2月10日 / 結論: 棄却
被告人が、町役場民生課衛生係長として、町営のじん芥焼却場の設備の管理およびそこに就労する労働者の指揮監督の任にあった以上、同人に同設備改善のための費用支出の権限がないとしても、労働基準法四二条にいう「使用者」というをさまたげない。
事件番号: 昭和25(れ)1572 / 裁判年月日: 昭和26年2月27日 / 結論: 棄却
労働安全衛生規則第一二四条は、労働基準法第四二条に定められている使用者が機械、器具その他の設備による危害を防止するために講じなければならない必要な措置の具体的内容を明らかにするために同法第四五条の委任により定められた命令であつて、同法第四六条第三項の委任による命令ではないこと所論のとおりである。従つて、規則第一二四条に…
事件番号: 昭和30(あ)2327 / 裁判年月日: 昭和31年3月29日 / 結論: 棄却
労働基準法第六条にいわゆる「他人の就業に介入し」とは、同法第八条の労働関係の当業者間に第三者が介在して、その労働関係の開始、存続等について媒介または周旋をなす等その労働関係について、何らかの因果関係を有する関与をなす場合をいうものと解するを相当とする。