被告人が、町役場民生課衛生係長として、町営のじん芥焼却場の設備の管理およびそこに就労する労働者の指揮監督の任にあった以上、同人に同設備改善のための費用支出の権限がないとしても、労働基準法四二条にいう「使用者」というをさまたげない。
労働基準法四二条にいう「使用者」にあたるとされた事例
労働基準法10条,労働基準法42条,労働基準法119条1号
判旨
労働基準法10条にいう「使用者」とは、事業主のために行為するすべての者を指し、設備改善のための費用支出権限がない者であっても、現場の管理監督責任を負う立場にあれば同条の使用者にあたる。
問題の所在(論点)
安全衛生設備の不備について労働基準法違反が問われる場合において、当該設備の改善に関する費用支出権限を持たない現場責任者が、同法10条の「使用者」として刑事責任を問われうるか。
規範
労働基準法10条の「使用者」とは、事業主、事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為するすべての者をいう。特定の違反事項(安全衛生設備等)について、直接的な費用支出権限を有していない者であっても、実質的に当該設備の管理および労働者の指揮監督の任にある者は、同条の「使用者」に含まれる。
重要事実
被告人は、町役場民生課衛生係長として、町が営むじん芥焼却場の設備の管理およびそこに就労する労働者の指揮監督の任にあたっていた。しかし、当該焼却場の設備を改善するために必要な費用を支出する権限は有していなかった。この状況下で、労働基準法42条(安全装置等)および119条1号に違反する事態が生じた際、被告人が同法10条の「使用者」に該当するかが争われた。
あてはめ
被告人は町役場の係長という立場にあり、本件じん芥焼却場の設備の管理および就労する労働者の指揮監督という、労働者に関する事項についての権限を現に行使していた。労働基準法10条は広範に「事業主のために行為するすべての者」を使用者として定義しており、形式的な費用支出権限の有無によってのみ決まるものではない。したがって、現場の指揮監督・管理の任にある以上、事業主(町)のために行為する者に該当すると評価される。
結論
被告人は、設備改善の費用支出権限がなくとも労働基準法10条所定の「使用者」にあたり、同法42条違反について刑事責任を免れない。
実務上の射程
労働基準法上の責任主体を広く解釈する判例。特に、現場の管理監督者(中間管理職)が「予算がないから改善できなかった」と主張しても、管理監督権限を有する以上は使用者性を否定できないことを示す際に引用する。
事件番号: 昭和26(あ)3254 / 裁判年月日: 昭和26年12月20日 / 結論: 棄却
一 労働基準法一二〇条一号にいわゆる第二四条の規定に違反した者とは、同法二四条の規定により賃金を支払うべき使用者であつて、しかも、同条に違反した物をいうものと解するを相当とする。 二 労働基準法で使用者とは、同法一〇条において、「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為を…
事件番号: 昭和25(れ)1572 / 裁判年月日: 昭和26年2月27日 / 結論: 棄却
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