一 労働基準法一二〇条一号にいわゆる第二四条の規定に違反した者とは、同法二四条の規定により賃金を支払うべき使用者であつて、しかも、同条に違反した物をいうものと解するを相当とする。 二 労働基準法で使用者とは、同法一〇条において、「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」と規定している。されば、第一審判決が、被告人を「表面上は同会社の有限責任社員に過ぎないが事実上は右設立以来同会社は同被告人経営の個人商店の如く同会社運営に関する実権を握つて同会社の経営を担当してゐるもの」と認定判示して、本件行為に対し同法二四条二項、一二〇条一号等を適用したのは、正当である。
一 労働基準法第二四条に定められた資金支払義務者の意義 二 表面上は会社の有限責任社員に過ぎないが事実上会社運営の実権を握り経営を担当している者と労働基準法第一〇条にいわゆる「使用者」
労働基準法10条,労働基準法24条
判旨
労働基準法120条1号(旧121条)の罰則が適用される「使用者」とは、形式的な役職名にとらわれず、実質的に事業の経営を担当し、労働者に関する事項について実権を握っている者を指す。
問題の所在(論点)
労働基準法24条の賃金支払義務に違反した場合の罰則規定(旧120条1号)における「使用者」の範囲。特に、形式的には有限責任社員にすぎない者が、実質的に経営権を掌握している場合に「使用者」として刑事責任を負うかが問題となった。
規範
労働基準法上の「使用者」とは、同法10条により「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」を指す。賃金支払原則(24条)違反の処罰対象となる「使用者」は、同条により賃金を支払うべき立場にあり、かつ、違反行為をなした実質的な経営担当者を含むと解すべきである。
重要事実
被告人は、有限会社の有限責任社員という形式的な立場にすぎなかった。しかし、実際には当該会社の設立以来、同社を個人商店のように運営し、経営に関する実権を掌握して実質的に経営を担当していた。この被告人が賃金支払に関する労働基準法24条2項に違反したとして起訴された事案である。
あてはめ
被告人は表面上は有限責任社員にすぎないが、事実上は会社運営の実権を握り、経営を担当していた。このような実態は、労働基準法10条にいう「事業の経営担当者」に該当する。したがって、賃金支払義務の履行を実質的に支配し得る立場にありながらこれに違反した以上、同法24条に違反した「使用者」としての責任を免れないといえる。
結論
被告人は労働基準法上の「使用者」に該当し、賃金支払義務違反による処罰の対象となる。本件行為に同法24条2項、120条1号(当時)等を適用した判断は正当である。
実務上の射程
労働基準法における「使用者」の概念が、会社法上の代表権の有無といった形式的地位ではなく、実質的な経営指揮権や労働者管理の実態に基づいて判断されることを示した。刑事罰の帰属先を決定する際の基準として、実質説的な立場を明確にしている。
事件番号: 昭和33(あ)1614 / 裁判年月日: 昭和34年3月26日 / 結論: 棄却
一 労働基準法第二四条第二項違反(賃金不払)罪は、その犯意が単一であると認め難いときは、支払を受け得なかつた労働者各人毎に同条違反の罪が成立すると認むべきである。 二 事業主たる法人の代表者は、同法第一二一条第一項の代理人というに包含されている趣旨と解するの相当である。
事件番号: 昭和25(れ)1572 / 裁判年月日: 昭和26年2月27日 / 結論: 棄却
労働安全衛生規則第一二四条は、労働基準法第四二条に定められている使用者が機械、器具その他の設備による危害を防止するために講じなければならない必要な措置の具体的内容を明らかにするために同法第四五条の委任により定められた命令であつて、同法第四六条第三項の委任による命令ではないこと所論のとおりである。従つて、規則第一二四条に…