一 労働基準法第二四条第二項違反(賃金不払)罪は、その犯意が単一であると認め難いときは、支払を受け得なかつた労働者各人毎に同条違反の罪が成立すると認むべきである。 二 事業主たる法人の代表者は、同法第一二一条第一項の代理人というに包含されている趣旨と解するの相当である。
一 労働基準法第二四条第二項違反(賃金不払)罪の罪数を定める基準 二 事業主たる法人の代表者と同法第一二一条第一項の代理人
労働基準法24条1項,労働基準法121条
判旨
労働基準法24条2項違反の罪数に関し、犯意が単一と認め難いときは労働者ごとに罪が成立し、かつ法人の代表者は同法121条の「代理人」に含まれる。
問題の所在(論点)
1. 複数の労働者に対して賃金未払いが生じた場合、その罪数は包括一罪となるか、労働者ごとに別罪となるか。2. 労働基準法121条の「代理人、使用人その他の従業員」に、法人の代表者が含まれるか。
規範
1. 労働基準法24条2項(賃金支払)違反の罪数については、その犯意が単一であると認められない限り、支払を受けられなかった労働者各人ごとに犯意が形成されているものと認め、各労働者ごとに罪が成立する。2. 法人の代表者は、労働基準法121条(両罰規定)に規定される「代理人」に包含される。
重要事実
被告人(法人の代表者)が、複数の労働者に対して労働基準法24条2項が定める賃金全額払いの原則に違反した事案。原審は、各労働者ごとに独立した犯意に基づき違反行為が行われたと判断し、また代表者が同法121条の「代理人」として処罰の対象になることを認めたため、被告人側がこれを不服として上告した。
あてはめ
1. 罪数については、未払いの経緯や態様に照らし、犯意が単一であると認められない場合には、被害を受けた労働者の個数に応じて犯意が形成されているとみるべきである。本件では、各人ごとに支払を受ける権利を侵害していることから、労働者各人ごとに罪が成立すると解した原審の判断は正当である。2. 両罰規定の適用対象については、法人の代表者は、法人を代理して行為する地位にあることから、同法121条の「代理人」に包含されていると解するのが相当である。
結論
本件上告を棄却する。労働者各人ごとに罪が成立し、かつ法人の代表者は同法121条により処罰の対象となる。
実務上の射程
労働基準法違反の罪数判断において、被害者の個数に着目する構成を示す。また、121条(現行121条1項)の「代理人等」に代表者が含まれることを明示したものであり、両罰規定の適用範囲を確定させる際に有用である。
事件番号: 昭和42(あ)187 / 裁判年月日: 昭和42年7月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働基準法121条1項(現在の121条)の適用において、法人の代表者等による違反行為があった場合、当該事業を実質的に経営する主体が同条の「事業主」に当たるとされる。原審が認定した事実関係の下では、被告人を同条の事業主と認めた判断は正当である。 第1 事案の概要:被告人が労働基準法違反の罪で問われた…
事件番号: 昭和25(れ)1572 / 裁判年月日: 昭和26年2月27日 / 結論: 棄却
労働安全衛生規則第一二四条は、労働基準法第四二条に定められている使用者が機械、器具その他の設備による危害を防止するために講じなければならない必要な措置の具体的内容を明らかにするために同法第四五条の委任により定められた命令であつて、同法第四六条第三項の委任による命令ではないこと所論のとおりである。従つて、規則第一二四条に…