労働基準法第六条にいわゆる「他人の就業に介入し」とは、同法第八条の労働関係の当業者間に第三者が介在して、その労働関係の開始、存続等について媒介または周旋をなす等その労働関係について、何らかの因果関係を有する関与をなす場合をいうものと解するを相当とする。
労働基準法第六条にいわゆる「他人の就業に介入し」の意義
労働基準法6条,労働基準法8条,労働基準法118条
判旨
労働基準法6条の「他人の就業に介入し」とは、労働関係の当事者間に第三者が介在して、その労働関係の開始や存続等について何らかの因果関係を有する関与をなす場合を指す。この「労働関係」は民法上の雇用契約が成立する場合に限られない。
問題の所在(論点)
労働基準法6条が禁止する「中間搾取」の構成要件である「他人の就業に介入し」の意義、およびその前提となる労働関係が民法上の雇用契約に限定されるか。
規範
労働基準法6条にいう「他人の就業に介入し」とは、労働基準法8条(現行法上の労働者・使用者概念に対応)の労働関係の当事者間に第三者が介在して、その労働関係の開始、存続等について媒介または周旋をなす等、その労働関係について何らかの因果関係を有する関与をなす場合をいう。これは、民法上の雇用契約が成立する場合への関与に限定されるものではない。
重要事実
接客業者と接客婦との間における労働関係について、第三者が介在し、その労働関係の成立や継続に関与した事案である。被告人は、当該関係が職業安定法5条の「雇用関係」や労働基準法上の労働関係に該当しない、あるいは民法上の雇用契約が成立しない場合には「他人の就業に介入」したことにならないと主張して上告した。
事件番号: 昭和27(あ)6649 / 裁判年月日: 昭和30年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働基準法6条の中間搾取の禁止、および職業安定法32条(当時)の有料職業紹介の禁止規定は、憲法上の適正手続や自由権に反するものではなく合憲である。また、起訴状において訴因が特定されている限り、訴訟手続上の瑕疵は認められない。 第1 事案の概要:被告人は、有料職業紹介事業の許可を得ることなく職業紹介…
あてはめ
本件における接客婦と接客業者との関係は、実態として労働基準法上の労働関係(または職業安定法上の雇用関係)に該当すると判断される。被告人は、これら当事者間に介在し、労働関係の開始や存続等について媒介・周旋を行うなど、何らかの因果関係を有する関与を行っている。かかる行為は、形式的な民法上の雇用契約の成否にかかわらず、労働関係の当事者外から労働過程に介入するものといえる。
結論
被告人の行為は労働基準法6条の「他人の就業に介入」した合憲な処罰対象に該当し、中間搾取の罪が成立する。
実務上の射程
労働基準法6条の適用範囲を広く解認する重要判例である。答案上は、本条の趣旨が封建的な中間搾取の排除にあることを踏まえ、「他人の就業」を民法上の契約概念に縛られず、実態的な労働関係として捉える際の根拠として用いる。第三者が労働関係の成立・維持に何らかの因果関係を持って関与すれば「介入」にあたると論じる際に活用すべきである。
事件番号: 昭和27(あ)3350 / 裁判年月日: 昭和28年12月15日 / 結論: 棄却
職業安定法第三二条第一項の規定は、労働基準法第六条の規定に対しいわゆる特別法の関係にあるものではない。
事件番号: 昭和30(あ)3483 / 裁判年月日: 昭和33年5月6日 / 結論: その他
業として、同一の婦女を公衆衛生又は公衆道徳上有害な売淫婦の業に就かせる目的で、婦女に売淫させることを業としている者に接客婦として就職を斡旋し、雇主から紹介手数料として金員を受領し利益を得たときは、一個の行為にして労働基準法一一八条(六条違反)の罪と職業安定法六三条二号の罪との二個の罪名に触れる場合に当る