業として、同一の婦女を公衆衛生又は公衆道徳上有害な売淫婦の業に就かせる目的で、婦女に売淫させることを業としている者に接客婦として就職を斡旋し、雇主から紹介手数料として金員を受領し利益を得たときは、一個の行為にして労働基準法一一八条(六条違反)の罪と職業安定法六三条二号の罪との二個の罪名に触れる場合に当る
動労基準法第一一八条(第六条違反)の罪と、職業安定法第六三条第二号の罪とが想像的競合となる事例
労働基準法6条,労働基準法118条,職業安定法63条2号,刑法54条1項
判旨
労働基準法6条違反の罪と職業安定法63条2号違反の罪が、同一の斡旋行為から生じる場合は観念的競合の関係に立ち、集合犯としての一罪を媒介に既判力の及ぶ範囲が画定される。
問題の所在(論点)
同一の就業斡旋行為が労働基準法6条と職業安定法63条2号の双方に該当する場合の罪数関係、および営業犯(集合犯)の一部について確定判決がある場合に、その既判力が他方の罪名による処罰を妨げるか。
規範
「一個の行為」といえるかは、社会的事実として観察して判断すべきである。また、異なる処罰規定であっても、その構成要件の中核をなす事実(本件では他人の就業への介入)が重なり合う場合には、刑法54条1項前段の観念的競合の関係になり得る。さらに、既判力は集合犯(営業犯)として単一の犯罪を構成する範囲において、それと観念的競合の関係にある他の犯罪事実にも及ぶ。
重要事実
被告人は、反復継続の意思をもって、婦女を売淫婦として就業させ、雇主から紹介手数料を受領した。この行為につき、被告人は既に職業安定法違反の罪で略式命令を受け確定していた。その後、同一の営業活動に含まれる別日の斡旋行為等について、労働基準法違反および職業安定法違反として起訴された。
事件番号: 昭和32(あ)3274 / 裁判年月日: 昭和33年6月19日 / 結論: 破棄自判
業として、求人依頼者に職人等をあつ旋し、依頼者より手数料を受領する行為は、一個の行為にして職業安定法第六四条第一号の罪(第三二条第一項違反)と労働基準法第一一八条の罪(第六条違反)との二個の罪名に触れる
あてはめ
本件の各所為は、業として有害業務への就業を斡旋し利益を得たものであり、社会的事実として一個の行為と認められる。したがって、労基法違反と職安法違反は観念的競合となる。また、前科に係る職安法違反の事実は労基法違反と観念的競合にあり、その労基法違反の罪は本件の労基法違反の事実と集合犯として一罪を構成する。この一罪を媒介とすることにより、前科の既判力は本件の事実に及ぶ。
結論
被告人の所為は前科の略式命令の既判力が及ぶ範囲内にあり、免訴すべきである。
実務上の射程
集合犯(営業犯)を構成する一罪と観念的競合の関係にある別の罪名についても、集合犯としての性質を通じて既判力の拡張を認めた重要な事例。実務上、営業として行われる犯罪の罪数と既判力の範囲を検討する際の指針となる。
事件番号: 昭和27(あ)3350 / 裁判年月日: 昭和28年12月15日 / 結論: 棄却
職業安定法第三二条第一項の規定は、労働基準法第六条の規定に対しいわゆる特別法の関係にあるものではない。
事件番号: 昭和30(あ)2327 / 裁判年月日: 昭和31年3月29日 / 結論: 棄却
労働基準法第六条にいわゆる「他人の就業に介入し」とは、同法第八条の労働関係の当業者間に第三者が介在して、その労働関係の開始、存続等について媒介または周旋をなす等その労働関係について、何らかの因果関係を有する関与をなす場合をいうものと解するを相当とする。
事件番号: 昭和27(あ)6649 / 裁判年月日: 昭和30年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働基準法6条の中間搾取の禁止、および職業安定法32条(当時)の有料職業紹介の禁止規定は、憲法上の適正手続や自由権に反するものではなく合憲である。また、起訴状において訴因が特定されている限り、訴訟手続上の瑕疵は認められない。 第1 事案の概要:被告人は、有料職業紹介事業の許可を得ることなく職業紹介…