業として、求人依頼者に職人等をあつ旋し、依頼者より手数料を受領する行為は、一個の行為にして職業安定法第六四条第一号の罪(第三二条第一項違反)と労働基準法第一一八条の罪(第六条違反)との二個の罪名に触れる
職業安定法第六四条第一号(第三二条第一項違反)と労働基準法第一一八条の罪(第六条違反)との関係
職業安定法64条,職業安定法32条,労働基準法118条,労働基準法6条,刑法54条1項
判旨
被告人が有料の職業紹介事業を行い、かつ業として他人の就業に介入して利益を得た行為について、職業安定法違反と労働基準法違反の観念的競合(刑法54条1項前段)が成立するとした。
問題の所在(論点)
有料職業紹介事業を行う行為が職業安定法32条1項違反(現行32条等)に該当するとともに、労働基準法6条の中間搾取禁止規定にも抵触する場合の罪数関係および量刑の妥当性。
規範
一個の行為が二個の罪名に触れる場合には、刑法54条1項前段を適用し、そのうちの最も重い刑をもって処断する。
重要事実
被告人は、熊本県下の農家や製造業者等に対し、雇主からの依頼に基づいて職業紹介を行い、有料の職業紹介事業を営むとともに、業として他人の就業に介入して利益を得ていた。被告人には道路交通取締法違反等の前科があるものの、本件犯罪の動機は主として雇主側の依頼にあり、紹介先も地方の職人や奉公人といった実態があった。
事件番号: 昭和30(あ)3483 / 裁判年月日: 昭和33年5月6日 / 結論: その他
業として、同一の婦女を公衆衛生又は公衆道徳上有害な売淫婦の業に就かせる目的で、婦女に売淫させることを業としている者に接客婦として就職を斡旋し、雇主から紹介手数料として金員を受領し利益を得たときは、一個の行為にして労働基準法一一八条(六条違反)の罪と職業安定法六三条二号の罪との二個の罪名に触れる場合に当る
あてはめ
被告人の行為は、有料の職業紹介事業を行った点において職業安定法64条1号(当時の規定)に該当し、同時に業として他人の就業に介入して利益を得た点において労働基準法6条・118条に該当する。これらは一個の行為で二個の罪名に触れるため、刑法54条1項前段、10条を適用し、犯情の重い職業安定法違反の刑に従って処断すべきである。また、犯罪の動機や態様、前科等の諸般の情状に照らせば、第一審・原審が科した実刑判決は甚だしく不当であり、執行猶予を付すのが相当である。
結論
原判決及び第一審判決を破棄し、被告人を懲役6月に処する。ただし、4年間の執行猶予を付する。
実務上の射程
職業安定法と労働基準法の関係において、同一の行為が両法に抵触する場合に観念的競合となることを示した事例である。実務上、中間搾取と無許可職業紹介が重なる事案の罪数処理の先例として活用できる。また、最高裁が職権で量刑不当(実刑を不当として破棄)を認めた点も刑事訴訟実務上重要である。
事件番号: 昭和27(あ)3350 / 裁判年月日: 昭和28年12月15日 / 結論: 棄却
職業安定法第三二条第一項の規定は、労働基準法第六条の規定に対しいわゆる特別法の関係にあるものではない。
事件番号: 昭和27(あ)6649 / 裁判年月日: 昭和30年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働基準法6条の中間搾取の禁止、および職業安定法32条(当時)の有料職業紹介の禁止規定は、憲法上の適正手続や自由権に反するものではなく合憲である。また、起訴状において訴因が特定されている限り、訴訟手続上の瑕疵は認められない。 第1 事案の概要:被告人は、有料職業紹介事業の許可を得ることなく職業紹介…
事件番号: 昭和30(あ)2327 / 裁判年月日: 昭和31年3月29日 / 結論: 棄却
労働基準法第六条にいわゆる「他人の就業に介入し」とは、同法第八条の労働関係の当業者間に第三者が介在して、その労働関係の開始、存続等について媒介または周旋をなす等その労働関係について、何らかの因果関係を有する関与をなす場合をいうものと解するを相当とする。