判旨
公判調書に公開を禁じた旨の記載がない限り、公判は公開して行われたものと解すべきである。また、被告人が公判廷で一審判決の事実関係を認めた供述は、その事実を認定する適法な証拠となり得る。
問題の所在(論点)
1.公判調書に「公開した」旨の明記がない場合に、公判公開の原則(憲法82条1項)に違反するか。2.被告人が公判廷で第一審判決の事実摘示を認める旨の供述をした場合、それを事実認定の証拠とできるか。
規範
公判調書に特段の公開禁止の記載がない場合には、憲法上の要請である公判公開の原則に従い、公判は適法に公開して行われたものと推定される。また、事実認定の基礎となる証拠の取捨選択は、事実審の合理的な裁量に委ねられる。
重要事実
被告人らは、窃取された物件が連合国占領軍の財産であることを争い、原審の事実認定に証拠がないと主張した。また、原審の公判調書には「公判を開いた」との記載はあるが、公開した旨の明記がなかった。さらに、原審が特定の証人の申請を却下したことの違法性も争われた。
あてはめ
公判調書に公開を禁じた旨の記載がない以上、当然に公開されたものと解されるため、公開原則違反はない。また、被告人らは原審公判廷にて第一審判決の事実摘示につき「相違ない」と述べており、この公判廷における供述を証拠として物件の帰属(連合国財産であること)を認定することは証拠裁判主義に照らし適法である。
結論
本件各上告を棄却する。公判の公開運用に不備はなく、証拠に基づく事実認定及び証拠採用の判断に違法はない。
実務上の射程
公判調書の記載から公開の有無が争われる実務上の場面で、特段の記載がない限り適法性を推定する根拠となる。また、被告人の公判廷供述の証拠能力とその証明力の評価における事実審の裁量を認める判例として参照できる。
事件番号: 昭和25(あ)3164 / 裁判年月日: 昭和27年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が供述者の所在不明を判断するに際しては、特定の書面の記載のみに拘束されることなく、諸般の事情を調査した上で総合的に決定すべきである。 第1 事案の概要:被告人は所持罪等の容疑で起訴された。第一審において、証人Aの供述録取書等を証拠とするに際し、裁判所はAが所在不明であると判断した。これに対し…
事件番号: 昭和25(あ)2729 / 裁判年月日: 昭和26年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の公判廷での自白に対し、捜査機関作成の差押調書や領収書等は、独立の証拠として自白の真実性を担保する補強証拠になり得る。また、現行犯逮捕から数日後に録取された供述調書は、不当に長い抑留・拘禁後の自白には当たらない。 第1 事案の概要:被告人Cは、第一審の公判廷において犯行を自白した。これに対し…
事件番号: 昭和25(あ)435 / 裁判年月日: 昭和25年11月21日 / 結論: 棄却
論旨は、本件起訴状には別紙目録記載とありながら目録の添附がなく、いかなる事実が起訴されたのか解らないのであるから、かゝる起訴に基く審判は憲法第三一条に違反するというのである。記録を調べてみると、起訴状の末項には契印の跡があるし、また第一審公判での起訴状朗読に対し被告人はボストンバックにつき弁解していることからみても、起…
事件番号: 昭和26(れ)415 / 裁判年月日: 昭和26年6月7日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和26(あ)4204 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において主張されていない憲法違反を上告理由とすることはできず、原審が判断を示さなかったことに違法はない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人が上告を提起し、憲法違反を主張した。しかし、原審(控訴審)に提出された控訴趣意書の内容を確認すると、その主張は量刑不当の主張に留まるものであった。原判決に…