判旨
没収をするか否かは裁判所の裁量に属し、任意的没収の対象となる物について没収を行わなかったとしても直ちに違法とはならない。
問題の所在(論点)
裁判所が任意的没収の対象となる物件について没収をしないと判断することは、裁量の逸脱・濫用として違法となるか。
規範
刑法19条等の規定に基づく没収の刑を科すか否かは、法的に義務付けられている場合を除き、事実審裁判所の裁量に属する判断事項である。
重要事実
被告人が関与した刑事事件において、原審は証拠物件(証第1号から第17号)について没収の言渡しを行わなかった。これに対し、上告人は当該物件を没収しなかったことの違法、および証拠調べの不備や量刑不当(執行猶予不付与)を理由として上告を申し立てた。
あてはめ
本件において、原判決が証第1号から第17号を没収しなかったことは判文上明白である。没収を行うか否かは原審の裁量に委ねられており、記録上、名古屋地方検察庁から愛知軍政部へ引渡済みの物件が含まれるなどの事情も鑑みると、原審が没収を選択しなかった判断に裁量の逸脱・濫用は認められない。また、執行猶予の成否についても同様に裁量事項である。
結論
没収をなすか否かは裁判所の裁量に属するため、本件物件を没収しなかった原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
任意的没収(刑法19条1項各号)の性質が「できる」規定であることを確認する際に用いる。答案上は、没収の要件を満たす場合であっても、裁判所が諸般の事情(物件の所在や性質、犯罪の情状等)を考慮して没収しない旨の裁量権を有することを説明する根拠となる。
事件番号: 昭和25(れ)1767 / 裁判年月日: 昭和26年3月1日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和25(あ)1580 / 裁判年月日: 昭和26年6月8日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和26(れ)1785 / 裁判年月日: 昭和26年10月23日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和26(あ)4204 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
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