一 上級審の裁判所における判断は、その事件について下級審の裁判所を拘束するものであること、裁判所法第四条の規定するところである。それゆえ「上級審において下級審判決が破棄され事件の差戻があつた場合には、下級審はその事件を処理するに当り判決破棄の理由となつた上級審の事実上及び法律上の意見に拘束され必ずその意見に従いこれに基ずいて事件の審判をしなければならないのであるから、既に下級審が上級審の意見に従つて事件を処理したものである以上、その上級審の意見が客観的に間違つて居ると否とに拘らずその下級審の判決を違法視することはできない」こと当裁判所大法廷判決の示すとおりである(昭和二四年(れ)第二〇二九号同二五年一〇月二五日大法廷判決)。 二 被告人に対し免訴の言渡された判決につき検察官が上訴を申し立てることは、憲法第三九条に違反しない。
一 下級審が事件について上級審が示した意見に従つて処理した場合の下級審判決の適否 二 免訴判決に対する検察官の上訴と憲法第三九条
裁判所法4条,旧刑訴法409条,旧刑訴法376条,憲法39条
判旨
上級審の差戻判決による判断は下級審を拘束し、その判断に従いなされた判決は客観的な正誤を問わず適法であり、また検察官の上訴は憲法39条に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 差戻判決において示された上級審の事実上・法律上の意見は、下級審を拘束するか。2. 免訴判決に対し検察官が上訴することは、憲法39条(二重処罰の禁止)に違反するか。
規範
上級審の裁判における判断は、裁判所法4条に基づき、その事件について下級審を拘束する。差戻しを受けた下級審は、判決破棄の理由となった上級審の事実上・法律上の意見に従って審判しなければならないため、当該意見に従って処理された判決は客観的な正誤を問わず適法となる。また、被告人にとって不利益な方向への検察官の上訴は、憲法39条の二重処罰禁止の規定に違反しない。
重要事実
事件番号: 昭和25(れ)1767 / 裁判年月日: 昭和26年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の「所持」とは、対象物を自己の事実上の支配内におくことを意味し、その具体的態様まで判示する必要はない。また、刑の執行猶予を付すか否かは事実審裁判所の広範な自由裁量に属する。 第1 事案の概要:被告人は、昭和22年政令165号に違反する罪(具体的な対象物は判決文からは不明)に問われた。一審およ…
被告人が物資を所持していた事案において、第一審の免訴判決に対し検察官が上訴した。最高裁判所は、当該物資の所持は別事件の所持とは独立した新たな所持にあたると判断して原判決を破棄し、事件を差し戻した。差戻しを受けた原審(下級審)は、この最高裁の判断に従い、別個の所持罪が成立すると認定して有罪判決を下した。これに対し被告人側が、差戻判決の拘束力や検察官の上訴の合憲性を争って上告した。
あてはめ
本件原審は、最高裁の差戻判決において「ペニシリン等の所持は別事件と独立した新たな所持である」と示された判断を前提に、別個の所持罪の成立を認めている。これは裁判所法4条に基づく上級審の拘束力に従った適法な審理であり、憲法39条にも抵触しない。また、検察官による上訴についても、既に確立した判例によれば二重処罰禁止に反するものではないことが明らかである。
結論
上級審の判断に従った原判決に違法はなく、検察官の上訴も合憲である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
裁判所法4条の「下級審の拘束力」の意義を明確にする文脈で活用される。特に、差戻判決の意見が仮に客観的に誤っていたとしても、その意見に従った下級審の判断は適法とされる点に特徴がある。刑事訴訟における検察官上訴の合憲性を支える基礎的な判例としても機能する。
事件番号: 昭和26(あ)284 / 裁判年月日: 昭和28年2月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の「所持」の概念については、物の事実上の支配を意味するものであり、原審の解釈に誤りはない。また、被告人の主張する免責事由が認められない以上、当該所持行為を罰することは正当である。 第1 事案の概要:被告人は軍票(軍用手票)を所持していたとして起訴された。被告人は、当該軍票を所持するに至った経…
事件番号: 昭和26(れ)415 / 裁判年月日: 昭和26年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】没収をするか否かは裁判所の裁量に属し、任意的没収の対象となる物について没収を行わなかったとしても直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人が関与した刑事事件において、原審は証拠物件(証第1号から第17号)について没収の言渡しを行わなかった。これに対し、上告人は当該物件を没収しなかったことの…
事件番号: 昭和23(れ)956 / 裁判年月日: 昭和24年5月18日 / 結論: 破棄差戻
一 一事不再審の原則は判事判決の既判力の一作用に外ならない。元來判決の既判力というものは一旦判決によつて一定の法律關係(刑罰權又は私權等)の存否が確定された以上原則として、爾後は法律上有効にこれを變動せしめないということをその本質とするのである。 二 民事においては裁判所は判決により確定された法律關係については、その判…
事件番号: 昭和26(あ)4204 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において主張されていない憲法違反を上告理由とすることはできず、原審が判断を示さなかったことに違法はない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人が上告を提起し、憲法違反を主張した。しかし、原審(控訴審)に提出された控訴趣意書の内容を確認すると、その主張は量刑不当の主張に留まるものであった。原判決に…