判旨
裁判所が供述者の所在不明を判断するに際しては、特定の書面の記載のみに拘束されることなく、諸般の事情を調査した上で総合的に決定すべきである。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法上の伝聞例外の要件となる「供述者が所在不明であるとき」の認定にあたり、裁判所はどのような基準で判断すべきか。
規範
刑事訴訟法第321条第1項各号(伝聞例外)の要件である「供述者が所在不明であること」の判断は、裁判所が諸般の事情を調査し、それらに基づいて客観的に決すべき事柄である。特定の書面における特定の記載内容のみによって、直ちに所在不明の成否が決定されるものではない。
重要事実
被告人は所持罪等の容疑で起訴された。第一審において、証人Aの供述録取書等を証拠とするに際し、裁判所はAが所在不明であると判断した。これに対し弁護人は、特定の書面に別の内容の記載があることを理由に、第一審の所在不明という事実認定は誤りであり、伝聞例外の要件を欠く証拠を採用した原判決には憲法違反がある等と主張して上告した。
あてはめ
弁護人は、特定の書面に特定の記載があることを根拠として第一審の認定を非難する。しかし、所在不明か否かの判断は、裁判所が諸般の事情を総合的に調査した結果としてなされるものである。したがって、所論の書面に特定の記載があるからといって、第一審がそれのみによって所在不明と決したとはいえず、またそれのみで判断が左右されるものでもない。原審が判断していない事項を上告理由とする点も含め、第一審の事実認定の手法に違法はないと解される。
結論
裁判所が諸般の事情を調査して所在不明と判断した以上、特定の書面の記載と抵触することを理由とする違法主張は認められない。
実務上の射程
事件番号: 昭和26(れ)534 / 裁判年月日: 昭和26年7月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物の所持を内容とする罪の認定において、証拠として所持された物件が現存していることは絶対の要件ではない。人証や書証といった物件以外の証拠によって、犯罪事実を認定することは許容される。 第1 事案の概要:被告人は昭和22年政令第165号違反(物の所持を内容とする罪)に問われた。原審は、所持された物件自…
伝聞例外(刑訴法321条1項2号、3号等)の「所在不明」要件の認定手法に関する判例である。答案上は、検察官による所在調査の程度や報告書の内容、住民票の有無などの「諸般の事情」を総合考慮して裁判所が合理的に判断すべき、という裁量的判断の枠組みを示す際に活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1554 / 裁判年月日: 昭和26年2月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判調書に公開を禁じた旨の記載がない限り、公判は公開して行われたものと解すべきである。また、被告人が公判廷で一審判決の事実関係を認めた供述は、その事実を認定する適法な証拠となり得る。 第1 事案の概要:被告人らは、窃取された物件が連合国占領軍の財産であることを争い、原審の事実認定に証拠がないと主張…
事件番号: 昭和25(あ)435 / 裁判年月日: 昭和25年11月21日 / 結論: 棄却
論旨は、本件起訴状には別紙目録記載とありながら目録の添附がなく、いかなる事実が起訴されたのか解らないのであるから、かゝる起訴に基く審判は憲法第三一条に違反するというのである。記録を調べてみると、起訴状の末項には契印の跡があるし、また第一審公判での起訴状朗読に対し被告人はボストンバックにつき弁解していることからみても、起…
事件番号: 昭和26(あ)284 / 裁判年月日: 昭和28年2月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の「所持」の概念については、物の事実上の支配を意味するものであり、原審の解釈に誤りはない。また、被告人の主張する免責事由が認められない以上、当該所持行為を罰することは正当である。 第1 事案の概要:被告人は軍票(軍用手票)を所持していたとして起訴された。被告人は、当該軍票を所持するに至った経…
事件番号: 昭和25(あ)539 / 裁判年月日: 昭和25年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】逮捕・勾留の手続に違法があったとしても、そのことのみでは上告適法の理由にはならない。また、控訴審で主張せず上告審で初めて主張する違憲論は、上告理由の適法要件を欠く。 第1 事案の概要:被告人が現行犯逮捕された後、別の逮捕状により逮捕・身柄拘束が継続された事案。弁護人は、この身柄拘束手続に違法があり…